朝礼はオフィスのなかで行われるものだ。外部の人間が参加したり、見学するのはまず不可能だろう。ところが、居酒屋「てっぺん」の朝礼は公開されている。そして、客としてその場にいたら従業員と一緒に参加することもできる。朝礼マニア(いるとすれば)にとっては絶対に見逃せないのが、てっぺんの朝礼だ。

渋谷のセンター街にある「てっぺん渋谷 男道場」で、ある日行われた朝礼はこんな様子だった。

まず、司会役の店長が挨拶。

 「全員目を閉じてイメージしてください。3年から5年後の自分の姿を色がつくほど鮮明にイメージしてください」

そうして、しばらく瞑想した後、突然、彼は大声を出した。

 「じゃあ、スピーチ訓練始め。テーマは夢」

そう言ったとたん、店内にいた従業員が全員、折り重なるように「ハイハイハイ」と、これまた大声で返事をしながら手を挙げた。そして、指名された者は汗を、涙を振り絞りながら、「私の夢は日本一ですっ」とスピーチを始めた。聞いていると絶叫調だけれど、内容は支離滅裂ではない。「オレたちはポジティブに働くんだ」といったことが語られる。

 「スピーチ訓練」の後は、「ナンバーワン宣言」「あいさつ訓練」「ハイ訓練」とテンポよく続く。

全体で15分間続く朝礼の印象はミーティングとお祭りが合体したようなもので、土俗的なミュージカルともいえる。ユニークな朝礼を発案したのは社長の大嶋啓介氏、33歳である。

 「朝礼で大切なのはテンポのよさとスピード感です。この2つが従業員に一体感を生み出します。そして、従業員がやる気になればサービスはよくなりますし、料理もおいしくなる。やる気のない人間が作った料理なんておいしくないですよ」