居酒屋「てっぺん」の創業は2003年。現在、店舗は4店。売り上げは6億円。従業員はアルバイトを含めて60名である。店の数は少ないけれど、「日本一元気のいい朝礼」で有名になり、各店舗はつねに満席だ。

社長の大嶋啓介は創業する以前、名古屋の居酒屋チェーンで修業していた。しかし、当時の彼は「独立して社長になるなんて無理じゃないか」と、しじゅう悩んでいたという。

 「居酒屋の店長をやっていたとき、アルバイトにもバカにされるくらい仕事のできない男でした。そして、そんな不甲斐ない自分が大嫌いでした」

これではいけないと思った彼は、自己開発の研修に通い、さらには休みを使って全国の人気居酒屋をまわることにした。2年間に102人の店長に会い、「どうしたら従業員のやる気を引きだすことができるか」を尋ねたのである。

 「その答えが朝礼でした。居酒屋のようなサービス業は従業員が輝いていなければダメです。繁盛するためには人が輝いていなくてはならない。繁盛店ではどこも工夫した朝礼をやり、気合を入れて、仕事に臨んでいました」

大嶋は変わった。嫌がる従業員と一緒に朝礼をやり、スピーチや挨拶の訓練をした。現在、てっぺんでやっている朝礼は当時、大嶋が試行錯誤してつくり上げたものが土台となっている。

 「従業員がやる気を出して働けばお客さんの満足度は違ってくる。それは従業員の成長にもつながるんです」

自分の目で見るまで、私はてっぺんの朝礼を誤解していた。「地獄の特訓」みたいな、いじめのような訓練をするのだろうと思っていた。しかし、実際のてっぺんの朝礼は野球やサッカーの応援に似ている。従業員たちは大声を出し、汗を流し、感激してから仕事に臨む。きっと彼らが大声で応援しているのは人生の困難へ向かい合おうとする自分自身なのだろう。(文中敬称略)