マスコミ業界は概して朝が遅い。営業や販売の部門は別にして編集や制作に関わる人間が朝の9時から席にいるなんてことはごく稀だ。ところが数あるマスコミのなかでも、出版社の宣伝会議だけは朝が早い。午前8時45分までにはほぼ全員が出社し、デスクの周りを掃除してから朝礼に臨む。しかも、朝礼は毎日行われている。

同社では男性はスーツとネクタイを着用し、女性も上着を着ている。ジーンズをはいた人はいない。

同社では男性はスーツとネクタイを着用し、女性も上着を着ている。ジーンズをはいた人はいない。

同社は1954年に創刊された宣伝広告の専門誌「宣伝会議」、「ブレーン」などの出版、コピーライター養成講座などの教育事業を行う会社で従業員は約100名。うち東京本社には90名が勤務する。

朝礼の風景は次のような感じだ。8時30分を過ぎると、ちらほらと社員が現れ、スーツ姿で掃除を始める。そして掃除はごく短時間で終わる。それは帰宅の際、机の上にあるものはすべて片づけるのが原則となっているからだ。出版社といえばデスクの上は単行本や雑誌が山積みとなっているところが多いのに、きちんと整理整頓されている。

午前9時になるとセクションごとに朝礼が始まる。内容は次の3つである。

・連絡事項の伝達
その日の活動予定などを発表する。編集部の場合は取材の予定などの発表。

・ひとことスピーチ
テーマは特に決まっていない。スピーチするのは編集長などセクションのトップの人たち。その日に感じたことを自分なりの表現で話す。

・企業理念と三大原則の唱和
企業理念と宣伝会議三大原則(整理整頓、時間厳守、正確迅速)を唱和する。

編集室長の田中里沙さんは朝礼の役割について次のように言う。

「朝礼自体は10分程度ですから、とても短い。うちは一般企業に取材することが多いので、朝早くから仕事を始めたほうが効率的なのです。そして、帰るのも早くなりました。社員の健康に寄与するのが朝礼だと思います」

(尾関裕士=撮影)