また、がんの罹患率についても冷静になる必要があります。よく「2人に1人はがんにかかる」といわれますが、これは高齢者を含めた数字。現役世代に限って見れば、罹患率はさほど高くありません。国立がん研究センターによれば、例えば40歳の男性が10年以内にがんにかかる確率は2%。老後に増える病気であれば、自己資金を準備する時間があるとも考えられます。

一生涯の保障が続く「終身」はむしろ不安材料

保険選びの基準は、自分で保障内容を説明できるシンプルなプランにすること。すでに医療保険やがん保険に加入している人は、どういう場合にいくら受け取れるのか調べてください。

一般に「入院給付金」「手術給付金」など、使途が細かく設定されていない保険がいい。がん保険の場合、100万円程度の「診断給付金」を受け取れるタイプがお勧めです。まとまったお金があれば、使い道は自由だからです。

また、一生涯の保障が続く「終身」よりは、一定期間のみを保障する「定期」がお勧めです。終身では契約内容が陳腐化するリスクがあるからです。医療は日進月歩で変わっていきます。長期の保障は、むしろ不安材料といえます。

医療保険・がん保険選びに迷った場合、参考になるのは自動車保険に対する考え方です。自動車損害賠償責任保険に加え、ほとんどの人は任意の賠償責任保険に入っているでしょう。保険金額には上限を設けていないはずです。万一の人身事故の際、賠償金が億単位になることもあるからです。一方、車両保険は付けていない人も多い。ちょっとした修理費用であれば、自己負担するほうが合理的だからです。

自動車保険では冷静な判断ができる人も、自分の体にかける保険では判断を誤りがちです。不安が大きいからでしょう。判断に迷ったら、自動車保険の入り方を思い出してください。

後田 亨
オフィスバトン「保険相談室」代表。約15年の保険営業経験から、顧客との「利益相反」を問題視し独立。保険の有料相談・執筆・講演等を行う。商品やサービス向上のため、金融機関にとって手ごわい消費者を増やすべく情報発信中。著書に『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』ほか。
(構成=小島和子 撮影=榊 智朗 図版作成=大橋昭一)
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