貴乃花親方の「正義は我にあり」のウラに透けて見えるもの
元横綱・日馬富士(33)の暴行問題は、「引退」発表後も収束していないどころか、むしろヒートアップしている感さえある。その一因に、殴られてけがをした貴ノ岩(27)の師匠である貴乃花親方(45)と、日本相撲協会の八角信芳理事長(54)をはじめとする執行部との鋭い対立があるのは、ご存じの通りだ。
協会執行部からすれば、相互不信のきっかけを作ったのは貴乃花親方のほうだと感じているかもしれない。貴乃花親方は、10月下旬の秋の巡業中、巡業部長でありながらモンゴル人力士による暴行の件で協会に相談する前に鳥取県警へ被害届を出したし、相撲協会役員室に呼び出されて貴ノ岩への聴取協力を要請された際も「お断りします」ときっぱりと拒否したからだ。
さらに、11月30日に開かれた定例理事会でも、貴乃花親方が協会による調査への協力を改めて拒否したため、その場で鳥取県警に直接電話する事態になった。県警の回答は「協会の聴取に(貴乃花親方が)協力するのかどうかはお任せします」というものだった。これに対して貴乃花親方は「任せると言っていたんですから、協力できない」と態度を変えなかった。
そのため、何人かの親方が「なんでなんだ」と声をあげ、一触即発の空気が漂ったという。結局は、貴乃花親方も「警察の捜査が終われば協力します」と譲歩したようだが、両者の相互不信が相当深刻であることは一目瞭然だろう。
▼貴乃花親方の怒りの矛先は「三者」に向けられている
ここまで深刻になったのはいったいなぜなのか。精神科医である私の目には、その一因に貴乃花親方のかたくなな姿勢があるように映る。親方の胸中には、激しい怒りと強い正義感が潜んでいる。その深層を解き明かしたい。
貴乃花親方が激しい怒りを覚えているのは明らかだ。この怒りは、三者に向けられているように見える。
1)貴ノ岩を殴った日馬富士
2)日馬富士を制止しなかったモンゴル人力士
3)暴行問題に真摯に対応してくれない(と貴乃花親方が感じた)相撲協会