どうして多忙な人ほど極めた趣味をもっているのか。長年の疑問はついに氷解した。時間管理に長けており、同時並行に物事を進め、やる気を自在に操れる……。気鋭の脳科学者、池谷裕二さんも驚いた達人の頭のカラクリとは。
<strong>ハニーズ社長 江尻義久</strong>●1946年、福島県生まれ。69年早稲田大学第一文学部社会学科卒業。同年、父の経営するエジリ帽子店入社。78年有限会社エジリ設立。86年首都圏進出を開始、株式会社ハニーズへ組織を変更。2003年JASDAQ上場。05年東証一部上場。08年900店舗達成。
ハニーズ社長 江尻義久●1946年、福島県生まれ。69年早稲田大学第一文学部社会学科卒業。同年、父の経営するエジリ帽子店入社。78年有限会社エジリ設立。86年首都圏進出を開始、株式会社ハニーズへ組織を変更。2003年JASDAQ上場。05年東証一部上場。08年900店舗達成。

「負けず嫌いなので、やり始めると徹底してしまうんですよ」

そう笑うのは、女性向け衣料専門店を展開するハニーズの社長、江尻義久さんである。例えば、ボウリング(アマ大会優勝の経験あり)。次に、麻雀(プロを打ち負かした経験あり)。そして、ゴルフ(シングルの腕前)。さらに極めつきが「生涯の趣味」、囲碁なのである。段位は取得していないが、以前対局したプロ棋士から「5段相当」のお墨付きをもらったというから、ただごとではない。

聞けば、囲碁を覚えたのは大学に入ってすぐの頃。学生寮で4年生を相手に九子の置き碁(ハンディ戦)で完敗したことから、持ち前の「負けず嫌い」に火がついた。おおまかなルールを知る程度だったが、徹底的にやりこめられたことが屈辱的だったのである。

「本当に頭にきました。以来、必死で練習しました。当時、『早稲田闘争』の影響で授業はすべて休講で、ほかにやることもなかった。2年生の終わりに寮を出る頃には、その先輩はもちろん、3段の腕前だった寮長とも5分でした」

ひとまずのリベンジを果たした形で、大学卒業後は、父の帽子店を継ぐため郷里のいわき市に帰った。しばらくゴルフ三昧の日々を送っていたが、31歳のとき「このままではいけない」と一念発起。約30年前に婦人服販売の有限会社を設立し、「多品種小ロット生産」を売り物に店舗網を拡大していった。現在、国内に約850、中国に約50と900以上の店舗を展開している。