ビジネスソフトウエア企業・SAPジャパンの代表取締役兼CFO(最高財務責任者)、井野勢津子さんは週末に、自宅近くの公園でジョギングをしている。
「走っていると、本当に一人っきりになれます。電話もメールも打ち合わせもない、完全にブロックされた時間。こんなにまとまった時間は会社ではありえません。息を弾ませ走っているとリラックスし、思考が深まり、ピュアになります(池谷's EYE【E】)。思いもつかないようないいアイデアが次々に浮かんでくるんです」
6年前まで勤めていたカリフォルニアの企業では、ほかの多くの社員とともに出勤前や昼食時にジョギングやマウンテンバイク、ゴルフなどで体を動かしていた。帰国後は週末のみだが、自分の頭と体のコンディションを整え、仕事のパフォーマンスを高めるために最低限の運動は欠かせない。調子のいいときは、ジョギングに加えジムで1キロほど泳ぐ。冬は、これにマシントレーニングやヨガ、加圧トレーニングもメニューに加えるなど、なかなかハードである。
ときには走りたくないこともあるが、そんなときは音楽の助けを借りる。ヒップホップの軽快なリズムを聞いていると、徐々にやる気が出てくるという。時速8~10キロと「少し体に負荷がかかる」ペースにしているのは、それにより質の高い睡眠を獲得できるから。また、汗をかきアドレナリンが出ると物事を前向きに考えられるようになるからである。内分泌物質など、体内の“化学反応”も計算したうえでの運動量ということになる。井野さんは語る。
「出張やプライベートの旅行で海外へ行く場合、現地にシューズや水着も必ず持参します。宿泊先に泳げるプールが備えてあるかも事前にチェックしています。とりわけ旅先でのトレーニングは心地いい。普段と違う風景や人々を眺める(池谷's EYE【F】)と、仕事にとらわれてすっかり狭くなっていた視野や思考が一気に広がる感じがするんです」
体調管理にオンもオフもないのである。
池谷'sEYE
【E】ジョギング中の脳は、ある意味で睡眠中と似ています。会話や資料などの外部情報を遮断して、蓄積した情報を反芻したり、思考を整理するためにはよい時間です。
【F】走って移動し、いつもと違う目線、景色、場所に身を置くと海馬などが刺激され、いい発想が生まれるかもしれません。乗り物での移動中の作業も同じです。