「必要なのは対話ではなく圧力だ」。9月21日未明、安倍晋三首相は国連総会でそう演説した。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は、トランプ米大統領に寄り添うような姿に「唖然とさせられた」という。しかし産経新聞や読売新聞の社説は、この演説を「良かった」「うなずける」と評価する。社説を担当する論説委員は、何を考えているのか――。
9月20日、第72回国連総会で一般討論演説を行う安倍晋三首相。(写真=首相官邸フェイスブックページより)

「日米首脳の言動は冷静さを欠いている」

安倍演説を評価する産経と読売の分析は後回しにして、まずは9月23日付の朝日新聞の社説から読み解いていこう。その書き出しからトランプ氏と安倍首相の冷静さを欠いた演説を批判する。

「圧力の連呼で解決できるほど朝鮮半島問題は単純ではない。危機をあおることなく、事態を改善する外交力こそ問われているのに、日米首脳の言動は冷静さを欠いている」

「ニューヨークの国連総会での一般討論演説である。各国が北朝鮮を批判し、国際社会として懸念を共有したのは前進だ」

「当事者であるトランプ米大統領と安倍首相の強硬ぶりは突出し、平和的な解決をめざすべき国連外交の場に異様な空気をもたらした」

この沙鴎一歩が感じたのと同じ異様さに朝日の論説委員も気付いたのだろう。

軍事力誇示のトランプに寄り添う安倍首相

問題の安倍首相の演説の翌日には日米韓首脳会議が開かれた。

朝日社説は「安倍首相は、続く日米韓の首脳会談後も、『最大限の圧力』を記者団に強調した」と書き、「確かに今は、北朝鮮への国連制裁を各国が一致して履行すべき時である。核・ミサイルの開発を断じて許容しない警告は、発信し続ける必要がある」と警告を重視したうえで次のように主張する。

「圧力はあくまで対話に導き出すための手段にすぎない。日本を含む周辺国に甚大な影響をもたらす武力行使の選択肢はありえず、どうやって交渉での沈静化に落着させるかの道筋を練ることが必要だ」

「安倍首相からは、そのための重層的な政策がうかがえない。軍事力を誇示するトランプ氏に寄り添い、対話の扉を閉ざすような発言に終始するのは思慮に欠ける。衆院選をにらんで脅威を強調する思惑を詮索されても仕方あるまい」

まさに朝日社説の主張する内容こそ、異常な北朝鮮を真っ当な国家にするためのひとつの大きな政策だと思う。ただ気になるのは朝日社説の次の最後のくだりである。

「交渉の接点を探る知恵が求められている」

交渉の接点を探る知恵とは具体的にどのような知恵なのか。そこを分かりやすく書いてほしかったと思う。