海外の投資家は、安倍政権を「安定している」と高く評価してきた。しかし、夏以降、支持率の低下を背景に、アベノミクスを中心とした経済政策の先行きが不安視されている。最大のポイントは2018年9月の総裁選で「安倍3選」が果たされるかどうかだ。経済のプロはどうみているのか。三井住友アセットマネジメントの渡邊誠シニアエコノミストが、政治、経済政策の見通しについてQ&A形式で解説する――。
Q:なぜこのタイミングで解散総選挙に打って出るのか?
A:内閣改造後、内閣支持率はいったん下げ止まり、横浜市長選、茨城県知事選で自公の推薦候補が勝利し、安倍自民は何とか劣勢を立て直しつつあるようにも見える。こうした中で、(1)共産党との選挙協力に消極的な前原氏が民進党代表となり、(2)その前原民進党が幹事長人事や離党者の続出で出だしから躓き、(3)小池都知事と近い日本ファーストの会も選挙態勢が整わない10月は、解散総選挙のタイミングとしては千載一遇のチャンスであった。
筆者は、首相が憲法改正を行うことが重要であると考えるなら、いわゆる改憲勢力で3分の2を占める状況で、改憲の発議を前に、議席を減らすリスクのある早期の解散総選挙に踏み切る可能性は高くないと考えていた。それでは、突如として首相が解散総選挙の意向を示したのは、憲法改正をあきらめたということだろうか。あるいは、早期の解散総選挙に打って出ても、改憲勢力で3分の2の議席を確保できる目算がついたから、勝負に打って出るということだろうか。後者の可能性も排除できないように思われる。
Q:支持率低下で、そもそも憲法改正を進めることは困難になったのではないか?
A:夏前までは、安定した高支持率、国政選挙で4連勝の実績が、安倍首相の自民党内における求心力を高め、安倍1強とまでいわれてきた。しかし、夏を境に支持率は急低下し、東京都議選では歴史的大敗を喫した。内閣改造後の動向から判断すると、党内は首相を支える方向でおおむね一致しているようだが、それでも党内で意見の分かれる政策を首相のリーダーシップだけで推し進めていくことが難しくなったのは確かだろう。党内でも意見が分かれ、国民の賛否も分かれる憲法改正についても、首相が当初想定したような形で進めることは難しくなったと見られる。