8%から5%への「引き下げ」
7月28日、安倍首相と昼食を共にしたジャーナリストの田原総一朗氏が、安倍首相に対して「政治生命をかけた冒険をしないか」と進言したことが話題になっている。「政治生命をかけた冒険」とは一体何なのか? 田原氏は複数のメディアに登場して、会談の事実を認めているが、「解散総選挙や内閣改造人事ではない」としながら、進言の具体的な内容については一切明かしていない。その一方で、田原氏はヒントとして、「日本の政治家で安倍首相にしかできないこと。自民党や民進党の一部は反対するかもしれないが、基本的に民進党も共産党も小沢一郎氏も反対しないもの」と説明している。
これらのヒントに当てはまるものは何か? これまでの安倍政権のあゆみを踏まえ、筆者は「消費税率の8%から5%への引き下げ」と推測している。これは、2013年秋、安倍首相が消費税率の5%から8%への引き上げを決断した時の事情を思い返せば、容易に推測がつく。
その当時、筆者はみんなの党代表の渡辺喜美衆議院議員(当時)の政策担当秘書の任にあり、党代表の国会対応、政策対応からメディア対応を担っていた。みんなの党は消費税増税に一貫して反対していたが、その理由は、増税は景気を腰折れさせるのみならず、デフレからの脱却を遠のかせることになる、というものであった。そして、行政改革などによる無駄の排除や成長戦略の着実な実施によって経済成長を後押しし、税収を増加させる。そうすればプライマリーバランスは改善し、消費税増税は必要ないという考えであった。
この考え方は、安倍政権の経済政策である「アベノミクス」の基本的な考え方と同じである。要は、アベノミクスを進めていけば消費税増税は必要なくなる。そして、実は本心では安倍首相も5%から8%への引き上げを実施したくなかったようだった。だが、霞が関、特に財務省からの強い抵抗により、安倍首相は渋々引き上げを決断してしまった。