「当日配送」はヤマト運輸頼みだったのか

今年4月、ヤマト運輸がアマゾンジャパンを含む当日配送サービスから徐々に撤退すると報道された。これを受けて、アマゾンジャパンはデリバリープロバイダ(提携する地域限定の配送会社)への当日配送サービスの委託量を増加したところ、配送遅延が発生。その問題がツイッターなどで拡散した。

このため「当日配送が滞りなくできていたのは、結局ヤマトがすごかったのではないか」など、アマゾンの物流能力を疑う声が高まった。だが私は、アマゾンが何より優れているのが、物流を最適化・合理化するための“ロジスティクス”の部分だと考えている。混乱は体制変更に伴う一時的なもので、すでに落ち着いている。

アマゾンは実際、ロジスティクスを軽視するどころか、最先端の取り組みを続けている。2015年には航空機20機のリース契約をし、今年1月、ケンタッキー州にあるシンシナティ・ノーザンケンタッキー空港に国際航空貨物ハブをつくることを発表。私は6月に見てきたが、空港敷地内に施設を建築する様子だった。自ら航空物流に手を出し始めているのだ。また今年6月には米国の高級スーパーマーケット・チェーン「ホールフーズ」を買収。ホールフーズの流通網を利用することで、食料品配達サービス「アマゾン・フレッシュ」のロジスティクスをより強化した。

自社による流通網を本気で目指す企業

アマゾンは最終的に自社で完結する流通網を本気で目指している。米国ではドローンで家庭に配送するための実験を続けており、日本でも注文から1時間以内に自社の車両で配送する「アマゾン・プライム・ナウ」のサービスを、2015年11月から始めた。将来的に深夜や早朝にも商品を受け取れるようになれば、配達時間を制限しようとしている宅配会社よりも重宝されるかもしれない。

さらにアマゾンは物流を強化するだけでなく、扱う商品を増やし、さまざまな画期的なサービスを開始し続けている。日本では年内にも、オフィスや工場などで使用する消耗品や商材などを販売する法人向け通販サイト「アマゾン・ビジネス」を開設する見込みで、ユーザーのアカウント登録の受け付けを始めた。今後、日本国内でもアマゾンが成長し続け、より存在感を増すことはほぼ確実だろう。

アマゾンを脅威に感じる企業は多いが、同時に消費者もアマゾンプライムサービスの便利さと安さに、こんな不安を持つかもしれない。生活の中でアマゾンが占める比重が高まり続けて、いつか手のひらを返されないだろうか、はたしてメリットだけを享受できるのだろうかと。