世界で広がる情報工作サービス

昨年の米国大統領選を契機に、「フェイクニュース」という言葉が注目され始めた。根も葉もないデマ情報、若干の真実が交じるも文脈を大きく捻じ曲げた記事など、虚偽のニュースが、ネットを中心に跳梁跋扈している。

ロシア外務省はロシアについてのフェイクニュースに反論するサイトを開設した。(写真=時事通信フォト)

この6月には米国のITセキュリティ企業・トレンドマイクロが、フェイクニュースに関する衝撃的な報告書を発表した。そこで明らかにされたのは、フェイクニュースを生み出し広めるビジネス、いわば“フェイクニュース工作サービス”が、すでに世界で利用されているという事実だ。さまざまなサービスを利用する際の推計コストまでが提示されている。

中国のある企業は1000~1500語のコンテンツ制作を200元(約3300円)で請け負い、中国の人気ソーシャルメディアで24時間以内に1万人のフォロワーを獲得するサービスを300元(約4900円)100台のスマートフォンを遠隔操作し自動でクリックさせるサービスも10万元(約164万円)で提供している。

またロシアでは、YouTubeのトップページに動画を2分間表示すると3万5000ルーブル(約6万5000円)、YouTubeに100件のコメントを載せると150ルーブル(約280円)というサービスがあるようだ。

1年に4000万円程度で可能

このような仕掛けは商品のプロモーションには有効だ。「このアプリは何百万ダウンロード達成」などの広告宣伝も、中国の工場に数千台のスマートフォンを並べて、遠隔操作でアプリを一気にダウンロードさせる手法で手軽に実績がつくれる。

報告書ではさらに、選挙や国民投票における大規模な世論操作の推計も紹介している。

対象地域やテーマに応じてカスタマイズされたウェブサイトの購入が3000ドル(約33万円)。ニュース配信とサイト更新費用が月5000ドル(約55万円)。プロモーションが月3000ドル。その他、SNSやニュースメディアに登場させる費用、ニュースに対する肯定的な投稿・コメントの掲載費用などを合わせると、40万ドル(約4400万円)ほどかければ多数の人々に影響を与えられるという。大金ではあるが、国家レベルの施策であれば、1年に4000万円程度なら現実的なコストだろう。