何百億円の広告宣伝と同等の効果も
もちろん、これらの仕掛けは100%成功するわけではない。しかしうまくいけば数千円から数万円の投資で、何十億円、何百億円をかけた広告宣伝と同等の効果を得られることもあるだろう。費用対効果はきわめて高い。
そもそも世論というものは、これまでも金によって動かされていた側面が強いように思う。企業のプロモーションは言うまでもなく、選挙戦も大量の金を投じた候補者が勝利して、国民の意見を誘導してきた。しかしそれがネットの浸透によって、低コストで世論操作できるようになった。さらに情報提示が巧妙になったことで、真の思惑が露呈しにくくなったのである。
また「世論を動かすため、金を注ぎ込む」の目的と手段が逆になったケースが目立つのも、従来とは異なる点だろう。フェイクニュースの大半は、「金のため、世論を動かす」原理に支えられている。昨年の米大統領選では、マケドニアに住む若者がトランプ支持者向けの捏造記事サイトを作り、莫大な広告収入を得たと報道された。運営した若者たちはトランプ主義者ではなく、目的はあくまで儲けることだった。
日本にも金儲けのためにデマを流布しようという人はいる。半年ほど前、「日本人女児を強姦した韓国人が、韓国で無罪判決を言い渡された」というフェイクニュースが話題になった。これは関連記事として韓国語サイトへのリンクを張るなど手の込んだものだったが、運営者はヘイトではなく広告収入が目的だったと告白している。ではいくら稼いだのかと言えば、初期投資を考えると結果的に赤字だったそうだ。
フェイクニュースが金儲けにつながるのは英語や中国語など人口の多い言語を用いたものばかりである。分母が多ければビジネスになるが、日本語では母数として足りないのかもしれない。