トークバラエティ『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京)が面白い。古舘伊知郎、千原ジュニア、坂上忍という芸能界の「うるさがた」男性3人がレギュラー出演し、ゲストで来た女性の「怒り」を聞き、反論したり反省したりする。ほかの番組ではあまり観られない振る舞いで、妙なかわいさがあるのだ。今回、3人の中の最年長である古舘伊知郎さんに、自分を含めた「おじさん」が愛されるための振る舞い方について聞いた。
――『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京)は、ゲストの女性が抱えている「怒り」をぶつけられて、古舘さん、千原ジュニアさん、坂上忍さんという芸能界でも一家言あるタイプのホスト3人が戸惑ったり共感したりする珍しい番組です。特に古舘さんは、普段の番組ではMCが多いので、これまであまり観ることのなかった顔を見せているように思います。

【古舘】「ビッチ」とか「ハニートラップ」とか、言葉としては知っていても、また違った方向から意味を知ることができて面白いですね。毎回どういう方がゲストで来るのかも知らないので、下調べもしていません。僕はただ生徒のように聞いて、そのときの感覚で何か言えばいい。

――これまで「おしゃべり」が仕事だった古舘さんが、聞き役に回っているのが新鮮です。

【古舘】楽しいですよ。若いときは、「聞き上手にはなかなかなれないな」と思っていました。間が怖いのでしゃべっちゃうし、自我が強くてやっぱりしゃべっちゃうし、受けを狙ってしゃべっちゃうし。「聞き上手」というと、相手の目を見て話を聞いてあげるのが上手な人のことだとみんな思っているでしょうが、そういうテクニカルな話ではないんだそうです。本当の聞き上手というのは、「慈悲の精神」なんだ、と。相手の苦しみ、喜び、怒りをとにかく心から聞く。徹底的に無償で聞くことが聞き上手なんだそうです。ギブ・アンド・テークじゃなくて、徹底的に自分がgiver、つまり与える側になる。実は成功者と呼ばれる方々の中にも、takerではなくてgiverのほうが多いんだそうですよ。だから、自分も無心で聞きたいと思っています。できてはいないんですけどね。頭ではわかっているけど、それができるかというと難しい。長い道のりだと思います。

自分の中のセコさを自覚する「人間ドック」

――番組でゲストが披露する怒りは、「『俺と寝ればいいことあるよ』と言ってくるセクハラ・パワハラおじさん」や、「自分のことしかしゃべらないチャラい男」など、男性に対するものもあります。それはどう思いながら聞いているんですか?

【古舘】「自分のことを言われてるのかな?」と思うときもありますし、その怒りを受け止めるのが62歳の初老のおじさんでいいのかな、とも思います。……今わざわざこういうこと言って、インタビュアーの方々に「初老だなんて、若く見えますよ」って言ってほしかったセコさもあるんですよ。

――気づかなくてすみません。

【古舘】そういう保険をかけるところが、クソジジイなわけです(笑)。女性たちのおじさんに対する怒りを聞いていて、反発してしまう気持ちもあるし、「それはわかんないなぁ」と思うときもあるし、「ここまで俺はひどくない」と思ういやらしい自分もいる。自分の心の中を検査しているようなもので、この番組は「心の人間ドック」でもあるんですよ。