経費だけで2人100億円

このところ、国内はもとより、お隣の韓国、アメリカ、そしてヨーロッパなど、世界各地から次々とニュースが飛び込んでくる。ついていくのも大変だが、後から見ると、これらのニュースはあまり意味がなかった、ということになるかもしれない。

人間は長期的な見通しを立てるのが苦手である。脳の最も重要な働きの一つは未来を予測することだが、ほんの少し先は予測できても、長期的なことはなかなか見通せない。

昨今は誰もが「人工知能」のことを話題にする。しかし、研究者たちは人間の知性の解明とその人工的再現に長い間取り組んできたし、その成果が今になって「目立つ」ものになってきたにすぎない。

報じられているニュースの中で、次の時代に大きな変化を起こすものがあるかもしれない。「人工知能」のように社会にインパクトをもたらす潮流は何か? その一つは、間違いなく「宇宙」だろう。

アポロ計画は1961年から72年にかけて実施され、全6回の有人月面着陸に成功。(写真=NASA/The New York Times/アフロ)

ペイパル、テスラ・モーターズ、ハイパーループなど、時代を切り開く事業、プロジェクトの数々に関わってきた世界的な起業家イーロン・マスク氏。そのマスク氏が率いる「スペースX」が、先日、画期的な計画を発表した。2018年に、民間人2人が月を周回して帰ってくる、宇宙旅行を実施するというのである。旅行者が誰かはまだ公表されていないが、今後、健康状態のチェックなどを経て名前が明らかにされるという。

地球から月に向かい、一周して戻ってくるまで、ほぼ1週間の旅行。宇宙船に乗り込むのは2人の旅客だけで、運航は無人で行われるそうだ。

巨大プロジェクトだけに、経費だけで2人100億円はかかる。2人の民間人は、すでに、かなりの額の手付金を支払い済みだということだが、誰でもできる旅行ではない。