人工知能(AI)の進化によって自動運転が実現するとか、囲碁や将棋でAIが人間を打ち負かしたとか、AI関連の話題が世間を賑わせている。しかし、大方の人々が関心を持つのはAIによって社会がどう変わるかだろう。評者も幼子を持つ親として、将来の社会環境には大いに関心がある。本書はAIの進化と、それによる社会への影響を経済学者が論じた本である。

著者によると、2030年頃にはマルチタスクをこなす「汎用AI」が登場し、平均的な人間のなしうる仕事の大部分を奪ってしまうという。たとえば「わが社の決算書をつくってくれ」「ホームページをつくってくれ」とAIに命じるだけで、作業がたちどころに完了するイメージだ。上司が部下に命じるような事務作業なら、汎用AIはなんでもこなすことができる。AIが労働者に置き換わる結果、45年頃には、日本では人口の1割ほどしか労働していないかもしれないという。

このことは、経済が成長しないことを意味しない。AIが労働者に完全に代替して機械が生産手段の主力となれば、むしろ効率的に生産が増え、経済は成長する。ただし経営者や株主などの資本家は利益を得るが、労働者は雇用を失い、所得を得る手段を失う。

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