「住人専用」レストラン、誕生。
東京・青山のとあるビルの30階。おいしい料理とワインを楽しみながら、ふと窓の外に目を向けると、そこには美しい夜景が広がっています。一見、商業施設やホテルの高層階にありがちなレストランのようですが、この店にはそれらと明確に異なる点が存在します。それは、このビルがタワーマンションであり、同店はその居住者専用のレストランであるということです。
青山通りと外苑東通りが交差する青山一丁目の交差点からほど近くにそびえたつこのビルは「パークアクシス青山一丁目タワー」。三井不動産グループが手がける高級賃貸マンションです。このマンション内にもともとあった喫茶ラウンジを全面的に改装して、2016年10月にレストラン「The Kitchen」がオープンしました。私は縁あって、このリニューアルに関わったのですが、非常に興味深いプロジェクトだと感じたので、その取り組みの一部をご紹介したいと思います。
そもそもなぜ三井不動産グループはマンション内に、わざわざ居住者のためのレストランなどつくったのでしょうか。ディベロッパーが高価格帯マンションの共用部にさまざまな機能(多目的スペースやスポーツジムやシアタールームなど)を持たせるのはよくある話ですが、それらは往々にしてあまり使われず、「宝の持ち腐れ」となりがちです。
しかし、今回のレストランに関しては、ディベロッパーとして居住者の満足度アップ、結果的には不動産価値の向上を本気で目指したに違いありません。「食」は誰しもに関係あるテーマなので、ミニシアターや多目的スペースなどに比べて実際の利用が期待できます。また食事をつくる時間のとれない多忙な住人が多いことや、マンションの足元に手頃な飲食店が不足していることなども、レストランという機能に注目した理由です。