ハイボールは絶妙なポジション獲りに成功
居酒屋で「ハイボールくださーい」と頼むのは、今やごくありふれた光景ですが、10年前にはまったくもって当たり前ではありませんでした。サントリーのウェブサイトによれば、ウイスキー市場はピークであった1983年に比べて、2007年時点で6分の1の規模にまで縮小を続けていたのです。当時はウイスキーが復権するとは、私を含めてほとんどの人が思いもしなかったはずです。
同社が「角ハイボール」を世に大々的に打ち出したのが2008年のこと。「おじさんがバーでちびちび飲む」ような存在だったウイスキーは、そこから10年も経たないうちに、居酒屋や自宅で幅広い世代にワイワイと、そしてガブガブと飲まれる姿へと変貌をとげました。
国税庁が昨年発表した「酒のしおり」の中の酒類販売数量のデータを見ても、底であった2008年から徐々にウイスキーの販売量は伸びており、2014年(データ上はこれが最新)は2008年比で157%となっています。ハイボールについては、もはやブームというステージはとっくに越えており、すっかり定着したと言えるでしょう。
以前私はハイボールについて考察したさいに、「ビールの後の2杯目」というポジションの獲得に成功したのではないか、という仮説を立てたことがあります。乾杯でビールを飲んだあとに、さて次は何にしようかなと迷うことがあります。当時は「これぞ」という決め手がない人も多く、そんな空いていたポジションにハイボールはすっと入り込んだように見えたのです。ちなみに、「糖質」や「プリン体」を避ける傾向が強まるにつれて、最近では1杯目からハイボールという人が増えているのも感じます。