「??×食」で広がる可能性

前回は「マンションの居住者専用レストラン」についてご紹介しました(http://president.jp/articles/-/20749)。この数年急速に増えた「手ぶらバーベキュー(店側が器材や食材をすべて準備してくれるスタイルのバーベキュー)」や、その進化形とも言える「グランピング(贅沢なキャンプ)」なども含めて、これらの現象は「飲食店の拡張」と表現できるでしょう。店という「箱」に閉じていた飲食店が、他の機能を付加したり、別の空間へと乗り出したりすることで、これまでの枠をはみ出していっているのです。

このことは飲食店側が新たなビジネスチャンスを求めた結果であるのは言うまでもありません。しかし同時に、異業種が「食」を取り込むことで、ターゲットやシーンを広げようという動きともリンクしています。例えば、商業施設では建物への集客のために、レストランフロアやフードコートを充実させる動きが活発化しています。こうした傾向は以前からありましたが、「モノが売れない」という今の時代環境がそれをさらに強く後押ししています。

また、ゴルフ場やアミューズメントパークといったエンタテインメント施設においても食に注力するところは増えましたし、これまでさんざん「まずい」と酷評されてきた病院でも、患者の満足度アップや「集客」のために食事を見直すところが増えています。さらには「地域活性」のようなテーマにおいても、食が代表コンテンツに選ばれることは極めて多いものです。つまり、異業種にとって「本業×食」というのは、ユーザーに非常にわかりやすく魅力的な形で新たな価値を提案する方程式になっているのです。