鉄道列車内での「至福」

先日、実際に体験してきた「レストラン電車」は、「鉄道×食」によって新たなシーンを生み出そうという試みです。西武鉄道が開業100周年の記念事業として昨年スタートさせた「旅するレストラン 52席の至福」は、東京・池袋と埼玉・秩父を結ぶ、週末限定の観光電車です。レストラン電車自体はすでに各地でいくつか展開されていますが(そもそも「食堂車」の歴史は古い)、池袋という大都市を起点にしていることが大きな特徴でしょう。

西武鉄道「旅するレストラン」の様子。

4両編成のコンパクトなサイズですが、そのうち2両が客席で全52席あります。驚いたのは1両分を使用している厨房が、オープンキッチンになっていることです。スペースや器材などで大きな制約がある中で、スタッフが可能な限り車内で調理を行っているのです。私が乗車した際にはパスタが出されましたが、麺を茹でる工程もその場で行っていました。

ランチコースで1万円、ディナーコースは1万5千円(いずれも乗車チケット込)と決して安い金額ではありませんが、ランチで100%、ディナーでも90%以上の予約率というから驚きです。私が乗車した際の客層を見ると「年配の夫婦」「シニアの母とその娘」など、さすがにその金額もあって年齢層は高めでしたが、乗客が楽しそうに食事をしていたのが印象的です。

通常1時間半程度で到着する道のりを、2時間半から3時間かけて進むのですが、窓外の景色を眺めたり、音楽の生演奏があったりと、優雅な時間を過ごすことができるため、満足度も高いようです。何より、この存在によって「母娘で食事をする」「秩父へ観光に行く」など、普段とは違う行動を取っている人が多いでしょうが、この電車がその「きっかけ」として機能しているようです。