料理の世界にも「世界ランキング」があり「トレンド」があります。最近の世界的なトレンドは、スペインの「エル・ブジ」に代表されるような、最新の技術を駆使して料理を作る“イノベーティブ”なレストラン。日本でもこの手の店が増えていますが、なぜか「一度行ったら十分かな」という声が多いといいます。

世界のレストランランキング上位の店は「イノベーティブ」

テニスの錦織圭選手やゴルフの松山英樹選手に関しては、世界ランキングが上がった、下がったと連日のように報道されていますが、料理の世界にもこうした世界ランキングがあるのをご存じでしょうか。毎年発表される「世界のベストレストラン50(The World's 50 Best Restaurants)」がそれにあたります。

もっとも料理の場合はスポーツの試合のように明快に成績が出るわけではありません。この指標は世界中のレストラン関係者の投票によって決まる仕組みになっています。2017年のランキングにおいて、日本からは「NARISAWA」(18位)、「傳」(45位)が50位以内にランクインしています。

近年、このリストに挙がってくるレストランには明快な特徴があります。そのキーワードは「イノベーティブ」。きっかけは、スペインにあった「エル・ブジ(エル・ブリ)」という1軒のレストランです。同店については書籍や映画などでさまざまな角度から紹介をされましたので、名前を耳にしたことがある人もいるでしょう。

「分子ガストロミー」料理は化学実験のよう

「分子ガストロノミー」と称されるその料理は、液体窒素、遠心分離機、真空調理器などを駆使して作り上げられ、その様子はまるで化学の実験のようです。また、ひとくちサイズの小さい料理が20も30も続く、「多皿構成」であることも特徴です。エル・ブジが先ほどのランキングの常連になってから(1位を獲得したのは2006年)、世界中のレストランにこのスタイルが急速に広がっていきました。

シェフたちはこぞって、さまざまな器具を使って新たな食感や見た目を生みだし、これまでにない食材の組み合わせにトライし、フレンチでもイタリアンでも和食でもない、その人だけの、その店だけの料理を創造していきました。まさに「イノベーティブ」です。