自宅でやらない「ホームパーティ」の利点

では、レストランを運営する企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。同店を運営しているのは、都内を中心に飲食店を20店舗ほど展開するコメールという外食企業です。通常の出店と比較して、投資や賃料などにおいてディベロッパーの協力が得られているという現実的な利点は確かにあります。しかし、それに加えて同社取締役の大越昭彦氏は「日々の営業に追われ続ける街場のレストランと比べて、お客様とじっくりコミュニケーションをとって向き合える」と言います。

「居住者専用」であることは、潜在的な顧客の絶対数という点では明らかに見劣りします。いくら良い店だと評判になっても、原則として外部の人間が単独で入店することはできないからです。しかし、これは裏を返せば、顔の見える顧客と濃密な関係性をつくることができるということを意味しています。彼らをきちんと満足させられたならば、「自宅にもっとも近いレストラン」として、頻繁に利用してもらえる可能性は高いでしょう。

The Kitchenではこうした特異性を活かすべく、通常の飲食店とは異なる機能を3つ備えています。1つは、充実した「パーティスペース」です。レストランに個室はつきものですが、同店では席だけでなく、簡単なキッチンおよびセルフサービスのドリンクバー(生ビールサーバーなどアルコール類を含む)の機能をつけています。これによって可能となるのが「自宅でやらないホームパーティ」です。

ホームパーティは気軽で楽しいものですが、準備や後片付けまで考えると、それはそれでおっくうです。しかし、マンション内のレストランで行えば、自宅でもなく、かといってただのレストランでもない「いいとこ取り」ができます。基本となる料理は店に用意してもらいつつ、「自分でもちょっと料理の腕をふるう」とか「こどもが眠そうなので、自宅に寝かしに行く」など、非常にフレキシブルな使い方が可能になるのです。