約2000年前の中国。中原を駆けた男たちは、それぞれの夢を追い、やがて死んでいった――。彼らのドラマはなぜ私たちを魅了し続けるのか。北方謙三氏は『三国志』(全13巻)で、前例のない人物描写に挑み、高い評価を得た。氏は英傑の生き様からなにを読みとったのか。
青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)を操る豪傑にして、文武に秀でた高潔なる武人、関羽雲長。弟分の張飛とともに劉備と義兄弟の契りを結ぶ「桃園(とうえん)の契り」は、『演義』や吉川『三国志』の冒頭を飾る名場面だ。しかし、これは『演義』のオリジナルで、『正史』には記述がない。
関羽●生年不詳。字は雲長。張飛とともに劉備の挙兵以来の部下。赤壁の戦いの後、劉備が益州に入ると荊州を任されるが、孫権の裏切りにあう。死後、首は曹操に送られたが、丁寧に葬られたという。なお中国では商売の神として知られる。
桃園で一緒に酒を飲んだくらいのことはあったかもしれない。しかし、最初に会ったその日に中山靖王の末裔と聞いて、「生まれた日は違っても、死ぬ日は一緒」と関羽ほどの男がやすやすと誓いを立てるとは思えない。行動を共にしながら、互いの器量を計り合うようなことがあったはずだ。信用できるか、好きになれるか、命を預けられるか。そのうちに戦友の関係が兄弟のような間柄へと変わっていったのではないか。
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(構成=小川 剛 撮影=大杉和広)

