約2000年前の中国。中原を駆けた男たちは、それぞれの夢を追い、やがて死んでいった――。彼らのドラマはなぜ私たちを魅了し続けるのか。北方謙三氏は『三国志』(全13巻)で、前例のない人物描写に挑み、高い評価を得た。氏は英傑の生き様からなにを読みとったのか。
「乱世の奸雄」は『正史三国志』において陳寿が許子将(きょししょう)という人物の言葉を借りて曹操孟徳(もうとく)を評した言葉だ。本当は「治世の能臣(ちせいののうしん)」という対になる言葉があるが、「乱世の奸雄」ばかりが独り歩きして、悪役のイメージを決定付けた。
曹操●155年生まれ。字は孟徳。後漢に仕え黄巾の乱には騎都尉として参戦。董卓の死後は袁紹を破って河北・中原の覇権を握った。江南の平定を目指したが、赤壁の戦いで劉備・孫権の連合軍に敗れ、天下統一は果たせなかった。享年66。
しかし単に奸智に長けていただけで、群雄割拠の三国時代に最大の版図を築けようか。私は曹操こそ、三国志の世界で最も苛烈、果敢に戦い、戦い続けることに最も純粋な戦人だったと思う。赤壁(せきへき)で周瑜(しゅうゆ)を撃破していればあるいは覇道は成ったかもしれない。その意味で悲劇の英雄でもある。
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