軽口を叩いただけ、部下が不祥事を起こしただけ、疑われただけで、懲戒処分が下されることがある! ここでは最新の傾向と自己防衛術を紹介しよう。
「お金ないんですか~」部下の余計な一言
不祥事にも様々あるが、例えば余計な一言で顧客を怒らせてしまったという事例。保険の営業が「月々数千円のはした金、本当に払えないんですか」と言って、頭にきた客先が怒鳴りこんでくるといったようなものだ。
不動産の営業マンであれば動くお金の桁が違うので、同様の問題は起きにくいが、扱う額が下がるとそういう軽いノリの人がいたりする。こういうトラブルを避けるためにはひとえに社内教育が必要だ。
また、部下が下請けいじめに手を染めていれば大問題に発展しかねない。独占禁止法という法律をご存じだろうか。学校で習った知識から、「カルテルやトラストやコンツェルンがどうのこうので」といった認識の人が大多数だが、実務上一番出てくるのは、この法律で禁止している「優越的地位の濫用」である。要するに親会社として下請けに無理難題を押し付けると処罰されるのだ。中小の工場には独自の技術を持ったところも多いので、それをきちんと理解せずに大きな顔をしていた担当者が職人を怒らせ、上司が平謝りということも珍しくない。優越的地位の濫用で揉めたときには、弁護士にすぐ相談するべきだ。専門性の高い下請法が絡んでくることも多いし、調査すべき事項が膨大になるので、一般人が処理するのはまず無理だからだ。
部下が不祥事を起こし、巻き添えを食うというのは、何としても避けたいところだろう。
事実、経理担当の部下が多額の横領をした事件では、関係書類をチェックしていれば容易に発見できることであり、また部下と食事をした際に給料から考えるとありえない多額の支払いを目撃していたにもかかわらず横領を事実上見逃していたとして、その上司の懲戒解雇が有効であるとされた事例がある。
弁護士 野澤隆
1975年、東京都大田区生まれ。都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒。
弁護士秘書などを経て2008年、城南中央法律事務所を開設。
1975年、東京都大田区生まれ。都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒。
弁護士秘書などを経て2008年、城南中央法律事務所を開設。
(唐仁原俊博=構成 小原孝博=撮影)