“突撃取材”で芸能人に恐れられていた芸能リポーターの草分け、梨元勝さんが肺がんのため亡くなった。65歳だった。

40歳を超えると、“がん年齢”というが、肺がんの場合は、60代、70代に患者が多くなる。

治療は「手術療法」「放射線療法」「化学療法」が三本柱。超早期肺がんならばレーザーを使った「光線力学的治療(PDT)」が行われる。手術をするにも開胸手術のみならず、身体にやさしい「胸腔鏡手術」も行われている。開胸手術では基本は肺葉単位で切除する「肺葉切除」である。

放射線療法では「定位放射線療法」が手術並みの治療成績とあって人気になっている。より正確にがん病巣に放射線を集中照射する方法である。健康保険は使えないものの、より治療効果の高い「粒子線(陽子線、重粒子線)治療」も新しい歩みを見せ始めている。

手術、放射線療法が局所療法なのに対し、抗がん剤を使った化学療法は全身療法。肺がんは組織のタイプによる分類としては「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)」に分けられる。小細胞肺がんは“肺がんの中で最も性質の悪いがん”といわれることでもわかるように、がんの増殖スピードが極めて速い。ところが、抗がん剤が他の肺がんに比べて効きやすいという面がある。

そのため、小細胞肺がんの病期の示し方は他の肺がんとは異なり「限局型」と「進展型」という分け方をする。

限局型 がんが左右一方の肺にとどまり、リンパ節への転移も縦隔リンパ節、鎖骨上窩リンパ節までにとどまっている。つまり、がんが胸腔内にとどまっている状態。
 ◎進展型 限局型の範囲を超えてがんが広がっている。

限局型では化学療法と放射線療法の併用で治療が行われ、進展型では化学療法のみで治療を行っていく。

限局型の治療で多く行われているのは、「シスプラチン」と「エトポシド」の多剤併用化学療法。1コースを4週間として効果と副作用を見ながら、2コース、3コースと続けたり、途中期間を置いたり中断したりしながら対応していく。胸部放射線療法は1日2回照射を週に5日間行い、これを3週間続けるのが標準的照射になっている。

そして、初期治療でがん細胞が完全に消失して4週間以上たった患者には放射線の「予防的全脳照射」が強く勧められている。脳への転移を防ぐためである。

進展型は非小細胞肺がんの病期に置き換えるとIV期なので、治療は厳しい。そんな中、標準治療として広く行われているのが「シスプラチン」と「イリノテカン」との多剤併用化学療法である。1コース3週間として治療を行う、1週目の1日目にはシスプラチンとイリノテカンを投与し、その後、シスプラチンは使わない。一方、イリノテカンは2週、3週目の1日目に投与する。これと同じ投与法で2コース、3コースを続ける。継続回数は抗がん剤による効果と副作用を見ながら判断する。

非小細胞肺がんも手術可能な段階で見つかるのは20~25%と少ないため、化学療法の併用が多い。が、化学療法は薬が全身にまわる全身療法なので、患者には体力が求められる。耐えられる体力がないと、他の治療を選択することとなる。まさに、患者それぞれに合ったオーダーメード医療時代になっている。

【生活習慣のワンポイント】

肺がん=“喫煙”、しかし、それだけではない。“遺伝”“受動喫煙”“大気汚染”“アスベスト(石綿の粉じん)”“他の呼吸器疾患(COPDなど)”“過度のストレス”も関係している。また、禁煙したからOKではなく、吸っていた期間のリスクはあるので、40歳以上の人は年に1回は肺がん検診を受けるべきである。