“めまい”というと、多くの人が“メニエール病”と答えるほど、「めまい=メニエール病」と思っている人は意外に多い。が、実は患者はそれほど多くはなく、めまいの中の10%程度といわれている。

目を動かしたり、目をジッととめて注視したりさせる中枢は、「内耳」「小脳」「脳幹」にある。その3つのどれかにトラブルが発生するとめまいが生じる。

メニエール病は内耳に原因があって起こるめまいで、最も認知度の高い疾患。仕事に家庭に、ストレス過多のどまん中にいる40代、50代の男性、女性は30代に多くみられる。

典型的なメニエール病は突然の“グルグルめまいの激しい発作”と同時に、“難聴”“耳なり”“耳が詰まった感じ”の症状があり、とても立ったままではいられない。

そして、発作を何度も繰り返すと、その都度、聴力は低下していく。だから、早期にめまいの専門医を受診して適切な治療を受けるべきである。

メニエール病の原因は内耳と前述した。内耳が平衡機能を担っている。内耳には「三半規管」「蝸牛」「耳石器」があり、バランスを司るのは三半規管と耳石器。蝸牛は音を聞きとる器官である。その内耳の水ぶくれ状態がめまいを生み出す。

内耳の蝸牛内部は「前庭階」「蝸牛管」「鼓室階」の三室に分かれ、前庭階と鼓室階は外リンパ液で満たされ、蝸牛管は内リンパ液で満たされている。この内リンパ液が過剰になると、蝸牛管を仕切る膜が破れ、外リンパ液と混ざって神経を刺激して、メニエール病の症状を引き起こす。

蝸牛管内の圧力が低下すると破れた膜は元のようにくっついて、発作は治まってしまう。なぜ、内リンパ液の産生と吸収のバランスが崩れるのか、それはまだ解明されていない。

診察は「問診」から始まる。どのようなめまいか。どのような状況のときに起こるか。また、「めまいの程度」「めまい以外の症状」「いつから起きたか」……この問診だけで、めまいの専門医は原因疾患をほぼ絞り込めるという。

「耳の検査」「聴力検査」「シェロング検査」「直立検査」「足踏み検査」「フレンツェル眼鏡検査」「血液検査」「CT検査」などでメニエール病と診断がつくと治療に入る。

治療はめまいの発作中には「メイロン」という注射がしばしば使われる。これは炭酸水素ナトリウム、つまり炭酸水なのだが、素晴らしい効果が期待できる。このほかに、飲み薬として血管拡張薬と利尿薬がよく使われる。利尿薬は内耳の水ぶくれ状態を改善するためである。

何度も発作を繰り返すと聴力はどんどん低下するので、そのようなときは手術も選択肢として考えることになる。

【生活習慣のワンポイント】

メニエール病になってしまった場合、その頃の生活状況をじっくりと思い出してみよう。ストレス過多、過労、睡眠不足といった状況が浮かびあがるはず。

となると、まずは対策として以下の3点を実行してみよう。(1)十分な睡眠。(2)スポーツや趣味でストレス解消。(3) 水ぶくれ状態を再度生み出さないために“塩分、水分を控える”。

そして、メニエール病の発作が起きたときは、以下の点を確実に守ろう。(1) 階段の途中のときは、あわてずに手すりにつかまってしゃがみこみ、じっとしている。(2) 家の中でもあわてずに安全な場所で休む。むやみに動かない。(3) 薬を処方されている人はすぐに薬を服用する(薬は常に持ち歩いているのがベスト。安心感もある)。

※ メニエール病の人は専門医から生活指導をしっかり受けよう。