骨がスカスカになり強度が弱くなる疾患といえば「骨粗鬆症」。骨折しやすくなり、それが原因で寝たきりにもなりかねない。
骨折の中には、「脊椎圧迫骨折」もある。今、圧迫骨折の治療として“セメント治療”が人気を集めている。正しくは「経皮的椎体形成術」である。
脊椎圧迫骨折は背骨があたかも押しつぶされるかのように変形してしまう骨折をいう。“くしゃみをしただけで、腰に激痛が出た”と聞くと、若い人ならば「ぎっくり腰(急性腰痛症)」などだろう。が、高齢者になるとくしゃみだけでの圧迫骨折もけっして珍しくはない。
尻もちをついただけで腰椎の圧迫骨折が起こることもある。圧迫骨折時の腰痛は激しいが、それを我慢したまま骨が固まってしまうと、痛みがなくなる代わりに腰が少し曲がってしまう。
腰が曲がると、やはりQOL(生活の質)は悪くなる。痛みを我慢することなく早くに整形外科を受診して治療に入るのがベスト。ただ、これまでの治療はギプスを巻くか、コルセットをつけるのが主流。これだと安静期間が3~4週間と長い。
今、人気の経皮的椎体形成術は腰椎の圧迫骨折部に骨セメントを注入する治療。入院は一週間程度で済み、背骨の曲がるのも防ぐことができる(施設によっては日帰りもある)。
では、その骨セメント治療がどのように行われるのか、紹介しよう。
まず、患者はX線透視装置のテーブルにうつぶせになる。次に、患者の患部に近い皮膚に局所麻酔をする。そして、X線透視下に直径3ミリくらいの針を経皮的に患部の腰椎に刺し込む。針が正確に腰椎に入っていることを確認し、骨セメントを注入する。
骨セメントは10分程度で固まり、治療は30分程度で終了する。ただし、治療が終了しても、患者は治療後30分はうつぶせ状態で安静を保ち、それ以降は1時間30分横になって安静を保つ。
つぶれかけた腰椎の中にセメントが入り、元に近い形をしっかり保つことができる。手術後数日は痛みが残るケースもある。
気になる治療成績は80~90%で痛みが軽減し、腰椎もほぼ元の形に近いものになる。残り20~10%は、痛みが残るケースも報告されている。
この治療を先進医療で行っている施設もあるものの、多くは自費診療で行われ、広がりをみせている。整形外科医たちの保険診療への強い働きかけもあり、近い将来には、保険適用になるだろう、と期待されている。
【生活習慣のワンポイント】
圧迫骨折の要因は骨粗鬆症なので、骨粗鬆症を引き起こさない生活習慣が重要なポイントとなる。それは以下の5点。
(1)禁煙 喫煙者はタバコを吸わない人よりも骨量が少ないことが研究でわかっている。
(2)適量飲酒 骨を作るのが骨芽細胞で、骨を壊すのが破骨細胞。その骨芽細胞の働きを阻害するのがアルコール。適量飲酒は、1日に日本酒ならば1合、ビールならば中ビン1本の量である。
(3)カルシウム、ビタミンD、ビタミンKをしっかり摂取。
これらはいずれも骨量を増やして骨を強くする。カルシウムとビタミンDを一緒に摂るとカルシウムの吸収率はアップする。また、ビタミンKはカルシウムの骨への結合を促す。
カルシウムの多い食材は煮干し、干しひじき、パルメザンチーズ、牛乳、干しえび……。ビタミンDはキクラゲ、シラス干し、イクラ、うなぎのかば焼き、干し椎茸……。ビタミンKはモロヘイヤ、納豆、焼きのり、干しひじき、小松菜……。
(4)日光浴 日光が皮膚にあたるとビタミンDは活性化し、よりカルシウムの吸収力がアップ。
(5)ウオーキング 骨を強化するのに最適な運動はウオーキングである。