文書に続々登場する有力者や富裕層の実名

中米パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから流出した顧客リスト、「パナマ文書」が世界を揺さぶっている。

パナマ文書とは過去40年間に英バージン諸島などのオフショア金融センターを利用した20万社以上の企業や個人の情報が記載されているリストだ。流出した文書のサイズは2.6テラバイトと巨大で、そこにタックスヘイブンを利用して企業や個人が“節税”を行っていたことを裏付ける内容を含めた1150万件の機密情報が収められている。

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」(パナマ市)。(写真=AFLO)

世界の富裕層がいかにタックスヘイブンを活用して資産形成しているか、パナマ文書は暴いたわけだが、世間の関心を集めているのはそこに登場する人物の名前だ。かつての国家元首や現職のリーダー、各国の有力政治家や公職者、実業家、著名人やスポーツ選手の名前も挙がっている。本人の名前が出てくる場合もあれば、家族や親族や友人の名前が出てくるケースもある。現地にペーパーカンパニーを設立して蓄財や資金移動を行うわけで、会社は実は誰の名義でもかまわない。(所有権を主張しない)親族や友人の名義が多いのはそのためだ。

パナマ文書の漏洩で税金逃れや資産隠し疑惑が噴出して、政治的な混乱をきたす国も出てきている。犠牲者第一号はアイスランドのグンロイグソン首相で、すでに辞任に追い込まれた。同首相は2007年に妻と共同名義で英領バージン諸島にオフショア会社を設立、この会社はリーマン・ショックによる金融危機で破綻したアイスランドの主要銀行の債券に投資していた。金融危機当時に銀行救済に当たったのが当の首相であり、世論の強い批判を浴びた。

亡父の名前がパナマ文書から見つかったイギリスのキャメロン首相も国内世論の批判にさらされている。父親がオフショアに設立した投資ファンドにキャメロン首相自身も投資して、首相就任前の10年に約300万円の売却益を得ていた。小額だが、タックスヘイブンを利用した多国籍企業の租税回避問題に先鞭をつけて規制に乗り出していたキャメロン首相としては手痛いスキャンダルだ。