去る4月3日にICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が「パナマ文書」を公表し、各国の政治家やその親族の汚職疑惑が注目を集めている。今後、調査や捜査が進展すれば、スキームが複雑な企業による脱税や、道徳的に疑問視されるグレーゾーンの節税も明らかになっていくだろう。

パナマ文書問題で窮地に陥るキャメロン英首相。(写真=時事通信フォト)

すでに米国ニューヨーク州の金融規制当局であるDFS(金融サービス局)が、ドイツ銀行、クレディ・スイス、ABNアムロなど13の銀行に、パナマ文書の流出元である法律事務所モサック・フォンセカとの接触に関する情報を引き渡すよう要求している。また、フランスでは脱税やマネーロンダリングに関与した疑いで、ソシエテ・ジェネラル銀行が家宅捜索を受け、スイス、アルゼンチン、イギリス、オランダ、ドイツなど10以上の国々で捜査や調査が始まった。

これらは表向きは「正義のため」だが、真の狙いは税収増だ。今、欧米では税金の「分捕り合戦」が起きているのだ。各国とも新たな法令や徴税体制をつくり、「タックスヘイブン(租税回避地)」を利用した脱税や節税を根絶やしにする構えだ。

泣く子も黙るIRS、違反者に莫大な罰金

この分野で先頭を走るのが米国だ。2010年に「FATCA(ファトカ/Foreign Account Tax Compliance Act=外国口座税務コンプライアンス法)」を制定し、世界のすべての金融機関に対し、米国居住者・米国籍保有者・永住権保有者の口座情報をすべて提供するよう義務付けた。従わなければ米国で発生した所得や資産の売却代金に3割の源泉税を課し、場合によっては営業停止処分や莫大な罰金も科す。

実行部隊は「泣く子も黙る」IRS(米内国歳入庁)である。米市民の脱税やマネーロンダリングに加担したとして、09年にはUBSに7億8000万ドル、12年にはHSBCに19億ドル、14年にはクレディ・スイスに28億1500万ドル(約3097億円)、15年にはコメルツ銀行に14億5000万ドルという巨額の罰金を科した。