日本で8年ぶりに開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)、伊勢志摩サミットは、G7の大舞台まで使って自らの政権延命を図ろうとするホスト役の安倍晋三首相の思惑が透けて見えて、後味の悪さしか残らなかった。
伊勢神宮の宇治橋前で各国首脳を出迎えた演出からしていやらしい。伊勢神宮の素晴らしさを世界に広めたのはドイツ人建築家ブルーノ・タウトで、「天から降ったものだろう」と称賛している。外国人が訪れても感動する神域だ。
元左翼の菅直人元首相や四日市が地元の岡田克也民進党代表がホストの立場で同じことをやるなら理解できなくもない。しかし右寄りの安倍首相がやれば、政治的な魂胆が見え見えになる。サミット開催地が伊勢志摩に決まったときから、G7メンバーを伊勢神宮に連れていくことが隠れたアジェンダだったのだ。2013年の靖国神社公式参拝が国際的な批判を浴びて以来、安倍首相は靖国参拝を控えている。首相自身も日本会議的な保守派のシンパもそのことに大いに不満を抱いてきたが、G7首脳を引き連れての伊勢神宮参拝となれば、これはもうお釣りがくる。右派勢力からすれば、伊勢神宮で海外の要人を出迎えた安倍首相は神様に近いところまで祀り上げられたわけだ。政権延命に向けて、安倍応援団の気勢が上がったのは間違いない。
そしてG7を政権延命という自らのアジェンダに引きずり込んだ極め付きは、件の「リーマン・ショック前の状況に似ている」発言である。
サミット初日の討議で、議長役の安倍首相はIMF(国際通貨基金)のデータなどをもとに作成した資料を示して、世界の商品価格がリーマン・ショック前後の下落幅と同じになったこと、新興国への投資の伸び率がリーマン・ショック以降初めてマイナスになったことなどを指摘した。そのうえで「リーマン・ショック前に北海道洞爺湖サミットが行われたが、危機の発生を防ぐことができなかった。同じ轍を踏みたくない。世界経済はまさに分岐点にあり、政策的対応を誤ると危機に陥る可能性があることは認識する必要がある」との現状認識を示して、各国足並みを揃えての財政出動の必要性を訴えた。