キャメロンの甘い読みが招いた結果だ

EU(欧州連合)からの離脱の是非を問うイギリスの国民投票は、僅差で離脱支持派が制した(残留支持派の得票率48.1%に対して、離脱支持派は51.9%。投票率は約72%)。事前の世論調査などから接戦が予想されていたが、「最終的には残留派が勝利してイギリスはEUに留まることになるだろう」という見方が大勢だったし、私もそう思っていた。それだけに離脱派の勝利は激震で、国民投票から一夜明けた6月24日の世界の株式市場は全面安の展開となった。為替市場ではイギリスポンドが売られて1985年以来の水準に下落、1日の下げ幅としては過去最大を記録した。当事者であるイギリス国民にとっても予想外の結果だったようで、彼らの後悔の念は相当に強い。

世論は二極化(7月2日、ロンドンで行われた残留派のデモ行進)(写真=AFLO)

今回の国民投票では世代間の意識の違いが明確に出た。

「We European」で育っている若い世代は圧倒的多数がEU残留を支持し、逆に高齢世代の多くは離脱を支持したのだ。極端に言えば高齢者世代は6対4で離脱支持、若者世代は7対3で残留支持という構図に色分けされた。

こうした分析結果を受けて「イギリスの運命を自分たちが決めたのは間違いだった。若い人たちがそんなに残留を望んでいるのなら、我々も残留に投票すべきだった」という声が高齢層から聞こえてくる。実際、イギリス議会には国民投票のやり直しを求める署名が殺到しているが、キャメロン首相は(引き継いだメイ新首相も)国民投票のやり直しはしないと明言している。

EU残留を呼びかけてきたキャメロン首相は「離脱に向けて新しい指導部が必要だ」と辞意を表明した。キャメロンというリーダーは頭は悪くないのだろうが、3つのミスを犯したと思う。1つはスコットランド独立の是非を問う住民投票を認めたこと。独立は否決されたものの、下手をすれば英連邦分裂の引き金になりかねなかった。