「家賃無料」で田舎暮らしが半年間体験できる福井県鯖江市の「ゆるい移住」プロジェクト。県外からの体験移住を希望する若者に住居を一部無料で貸し出すもので、この3月、予定していた半年間の実験期間を終え、7人が終了後も鯖江市に残って生活することになった。総括の記事は改めて掲載するが、企画者の若新氏が、プロジェクトを通じて気づいたことをまとめていく。
(プロジェクト詳細は連載33回参照:http://president.jp/articles/-/16305

就職よりも、「生業(なりわい)」をつくる

人生の実験で得られるものとは

「ゆるい移住」プロジェクトには半年間で15人の若者が参加し、県外出身の若者が7人、鯖江に残りました。実験的な移住プロジェクトとしては成功です。4月からは、ある地元の経営者が所有する空きアパートまるまる1棟を無料で貸してもらえることになり、メンバーの大半はそこで新たな共同生活を始めています。

新天地の地方のまちで、いわゆる「よそ者」の若者たちはどんな生活をしているのか。一気に7人も移住したとなると、気になる人はたくさんいるようです。若者の地方移住については就職とセットで語られることが多いのですが、内情をみると、いわゆる「就職」をした人は1人もいませんでした。

地方のまちでの新しい生活に挑戦する若者たちに、まずは就職して収入の基盤からつくろうという発想はあまりないようです。会社組織との雇用契約の形などにもまったくこだわりません。

では、彼らはどんな生活しているのかといえば、「生業(なりわい)」をつくろうとしている、という表現が適切なのかもしれません。

自分の得意分野を生かして塾を始めたメンバーもいれば、まったく新たな活動として林業に関わる人や、コミュニティスペースの運営を手伝いながらいろいろな地域活動に関わっている人、元々やっていたIT関連の仕事に従事しながら、都会と地方の二拠点生活を試みているという人もいます。

そしてそれは単に、新しい働き方に挑戦している、というだけのことでもなさそうなのです。