PCが並ぶ職場で、人どうしの「ヨコの繋がり」が失われている。お互いの仕事が見えず、偏りが生じ、その結果、ムダな時間が費やされる――解決法はないだろうか?

※【講義編】はこちら(http://president.jp/articles/-/17940)

タスクボードは、実地でどう運用されているのだろうか。

訪れたのは、マーケティングリサーチのクロス・マーケティンググループ(東京都新宿区)。改善塾の1期目が終わったばかりだ。毎週水曜日に現場のマネジャークラスが午前・午後で計6時間弱集まる。

筆者が仰天したのは、マネジャーの田中真人氏(39歳)が「ワークプレイスツアー」と呼ぶシステムだ。

「一マネジャーの部署に他のマネジャー複数が巡回、活動状況を見聞きし、提言する“ツアー”」(田中氏)

わが身に置き換えてみた。編集部の海千山千デスク3人が残る1人を糾弾……うう、嫌な予感しかしない。

「最初は意見なんて全然出なかった。ゾロゾロ来てケチをつけにきてるみたいで(苦笑)」(同)

それはしんどいですね、とうっかりつぶやいた筆者に豊田マネージメント研究所の高木徹副社長がグサリ。

豊田マネージメント 研究所 高木徹副社長

「向上心のない、変わらずにいたい人にとって、習慣を変えるのはしんどい。それでも普段の仕事は回るから、誰がそうなのか顕在化しにくい」“ツアー”の目的は、そういう困ったボトルネックな人々(どうもすみません)をあぶり出し、自ら殻を破る気づきを与えることだという。

「一個人に属人化してしまった仕事は、細かく割ってタスクの“粒度”を下げれば、周囲に渡して負担を減らすことができます」(高木氏)

同社は中途入社組が多く、社員の年齢・キャリアが様々。しかも、「リサーチャーという職種は個人単位で完結するから、他の人と話さなくても仕事は回る」(田中氏)。日中のフロアはいつも静か。同じチームでもお互い誰が忙しいのかわからない。誰かがパンク、炎上して初めて気づく有り様だったという。