PCが並ぶ職場で、人どうしの「ヨコの繋がり」が失われている。お互いの仕事が見えず、偏りが生じ、その結果、ムダな時間が費やされる――解決法はないだろうか?
私だけいつも仕事が遅い……
人にはしばしば、己の心の傷と向き合わねばならぬときが訪れる。
幼稚園時代、折鶴を折る作業にクラスで1人だけついていけなかった筆者。隣の(わりと可愛い)女の子にこれ見よがしに「にしかわくんだけ、おそーい」と毒づかれて以来、どん臭さへの劣等感と深刻な女性不信に長くさいなまれる破目に陥った。
今はまあ、女性とは口がきけるようになったものの、「レシピ通りつくったら負け」という依怙地なオリジナリティ追求の性根は、かえって頑迷に根付いてしまった。
パソコンの前で延々妄想にふけり、気づけば深夜の職場に1人きり……。そんな中年のトラウマに塩をすり込むがごとく、「トヨタの時間術を体得せよ」とのミッションが下りた。
トヨタ。いわずと知れた世界最強の自動車メーカーである。「乾いた雑巾を絞る」といわれる合理性追求は、世界の経営者の畏怖の的だ。その時間管理の厳しさたるや、そりゃあもう、尋常ではないに違いない。
しかし筆者も部数ナンバーワンビジネス誌(ABC最新調査、2015年上期印刷版)の編集部員、仕事に私情は差し挟まぬハードボイルドである。にっこり笑顔で引き受けて、「改善塾」を主宰する豊田マネージメント研究所(TMG、愛知県名古屋市)の門を叩いたのだった。
トヨタの生産方式を源流とする「改善塾」のプログラムは、その名もTMS(Total Management System)。主コンセプトは「“縦糸”の組織に“横糸”を通す」。タテ関係だけで運営される、マネジメントがバラバラで顧客視点皆無、みんな上司の顔色ばかり見る……というあるある感溢れる組織を、“横糸”を通すことで強靭につくりかえるのだ。