「トヨタの企業体質をつくり上げたのは、技術力もありますが、むしろ人の育て方にあります」――そう語るのは、TMGの高木徹副社長(53歳)。e -TOYOTA部の基幹職として品質管理を担当したトヨタOBだ。その後、富士通に転じて自律改善推進室プロジェクト部長などを歴任し、2009年から同研究所で現職に就く。「改善塾」講師として教えた塾生は1000人以上という。

まずはその高木氏に同行してシンポー情報システム(神奈川県横浜市)へ。ソリューション事業を営む同社では週1回の「改善塾」が2期目(1期半年)を迎えている。

筆者は各部署から集まったチームリーダー15人と都合5時間、机を並べた。この日の主テーマは、基本的な3ツール(図を参照)の1つ「タスクボード」を、各部署なりにどうアレンジするかだった。

タスクボードとは、部署のメンバーが、付箋紙1枚につき仕事=タスク(task)1つを記したタスクカードを貼り付けるボードだ。時と共に付箋紙を動かすことで、全員のタスク進行がひと目でわかる。「負荷や能力を平準化したり、タスクの優先順位をつけたり、並行するタスクを制約する機能がある」(高木氏)。

タスクボード作成は、まず各自の仕事の洗い出しから始まる。高木氏、おもむろに「仕事で手待ちが発生するよね。その原因は何?」と、一人一人指名してゆく。「前工程が終わらないから」等々の回答が。身を縮めていた筆者。高木氏と目が合った。

「編集の場合はどう?」。

高木氏の手に竹刀はない。「ええーと、書き手の入稿が遅れたとき」。声が裏返る。「なぜ個人差があるの?」「力量って何が違うの? 仕上がりの差って?」……次々と質問が。「事前に十分な摺り合わせをせず丸投げしたとか……」と筆者。