トヨタ自動車は2014年4~6月期の営業利益で、同四半期として過去最高を更新した。その背景にはTPS(トヨタ生産方式)に代表される、ムダを徹底的に排除し合理性を追求する仕事の仕方がある。業務の生産性を向上するために、どのような手法を用いているのか。

Q: 生産性を上げるためにしている工夫とは?

日々の業務の生産性を向上するために着手しなければいけないのはムダの削減です。

業務に費やす時間は「主作業」「付随作業」「ムダ・例外作業」の3つに分類できます。

主作業とは付加価値の源泉になっている作業で、この割合を最大化することが生産性を上げるうえで非常に重要です。営業活動をしたり、新規事業を考える時間はこれに当たります。

付随作業は付加価値を生まないが現時点では必要な作業のこと。社内向けの資料作成や、事務処理の時間はこれに該当しますが、なるべく短くすべきです。

ムダ・例外作業は付加価値にまったく関係のない作業を指し、即刻なくす努力が必要です。

主作業を最大化するためのポイントは3つあります。1つ目は「あえて『現状否定』の視点を持つ」ことです。長年にわたって形成された仕事のやり方は「それが当たり前」であると思い込みがちで、意識しないと改善点は見えてきません。

2つ目のポイントは「ムダは、外観ではなく中身で判断する」こと。一見、主作業に分類される業務でも、ムダなやり方をしている場合があります。

逆に手を動かさず一見ムダに過ごしているように見える時間が、長期的プランを立てるために必要な「考える時間」になっている場合もあります。これは「付加価値のある遊び」というべきもので、削減すべきではありません。

3つ目のポイントは「すべては『事前準備』が生命線」です。

たとえばトヨタでは報告や提案をA3シート1枚に簡潔にまとめることが習慣化されていますが、あらかじめシートの作成をイメージしながら仕事を進めると、実際の作成がスムーズに行えます。常日頃から事前に作業のイメージをしておくことが重要なのです。

作業のムダを見つけるには、「7つのムダ」という手法が役立ちます。これはトヨタの製造工程で行われてきた手法ですが、私たちの日々の業務のムダを発見する際にも有用です。