【家計】月10万円稼ぐだけで老後は黒字になる

住宅ローンの消えたシニアの家計は軽い

坂本貴志さん
坂本貴志(さかもと・たかし) 1985年生まれ。リクルートワークス研究所研究員・アナリスト。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事後、内閣府官庁エコノミスト。三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。著書に『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』(講談社現代新書)など

働くシニアの間では、現役時代と仕事内容や待遇が大幅に変わって戸惑う人も少なくないでしょう。私は「小さな仕事」と呼んでいますが、心身ともに無理せずに働ける仕事を見つけ、月10万円程度を稼げれば、シニアの大半は家計を維持できるはずです。

総務省の2025年の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入は約25万4000円、実支出は約29万7000円で、月約4万円の赤字です。しかし年金以外に毎月10万円程度の収入があれば、貯蓄を取り崩さなくても家計は黒字化できます。

シニアは大半が住宅ローンを完済し、子どもも独立しており、支出も大幅に減っています。小さな仕事を選べば、幸福度の向上にもつながると私は考えています。時短労働のほうが長続きし、責任や難易度が下がればストレスも減る。「やりがいのある仕事」「好きな仕事」も選びやすくなるのです。

【図表】老後は支出が大幅に減る 65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支
【転職】「残る」がリスクは低い 動くなら50代前半

収入の多寡は気にしなくていい

「第二の人生」は人によってさまざまでしょう。ただ、ご留意いただきたいのが、セカンドキャリアのプランは遅くとも50代前半までに決めて、準備を進めるべきだということです。第二の人生を決める場合、「いまの職場で働き続けたいかどうか」が最初のポイントになります。「ほかの仕事に就きたい」という強い意思がなければ、60代前半では継続雇用が最も優先すべき選択肢になると思います。

転職や独立には時間・労力・資金がかかります。それに比べて「勝手を知っている会社」に残る選択肢は、経験も生かしやすく、相対的にリスクが低いと言えます。ただし、定年後に仕事内容や職場環境が大幅に変わるケースもあるので注意してください。

65歳はセカンドキャリアの大きな節目です。65歳超の継続雇用制度を導入する企業も増えており、「同じ会社で働き続けたい」なら65歳以降の継続雇用を選んでもいいでしょう。なお「在職老齢年金制度」の改正や、年金の「繰り下げ受給」を踏まえれば、65歳以降に働き続けるとしても収入の多寡はあまり気にしなくてもいいでしょう。

70歳前後になったら「小さな仕事」への本格シフトを考えましょう「人生の終末」から逆算して、余生のプランを立てたほうがいいと思います。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年6月12日号)の一部を再編集したものです。

(構成=野澤正毅 写真=本人提供)