定年後の生活に備えて、現役時代にやっておくべきことは何か。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志さんとコンサルタントの松雄茂さんの共著『再雇用という働き方』(PHP新書)より、一部を紹介する――。(第3回)
オフィスでラップトップを開いて談笑する中高年ビジネスマン
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「いま所属する会社」に残るか否かを分けるポイント

大企業のミドルシニア社員を見ると、ポストオフ後の処遇にげんなりしている人は少なくないことがわかる。給与に対する不安、仕事内容の不満、やりがいのある仕事を任されないことも含めて苦しんでいる。

現役時代と変わらぬ働き方を続けたいという意欲ある当事者の観点から、まず判断すべきは、自分の所属している会社が、ミドルシニア社員の貢献に応じた適正な報酬を支払う準備と覚悟があるのかという観点だ。

ミドルシニアの貢献を引き出す適切な人事制度とその運用が行われている会社であって初めて、プレイヤーとしての成果を高めると同時に、適正な評価を勝ち取っていく戦略を取ることができる。逆に、そのような準備が整っていない会社だと判断されるのであれば、残念ながらその会社にはもう見切りをつけなければならない。つまり、転職や独立や副業を前提に動き始める必要があるということだ。

一方、もうひとつ考えなくてはならないのは、自分は本当にこれまでと同じ働き方を続けなければならないのかという点である。

多くの人が定年前後で仕事に対する価値観が大きく変わる。現役時代に重視していた「充分な賃金を得る、良い生活をする」「多くの人から褒められたり、尊敬される」「所属組織に貢献する、組織のために全力を尽くす」といった価値観から、「人の役に立ち、感謝される」「自分が楽しめる、面白いと思える」「職場環境が快適でストレスが少ない」「次の世代のためになると感じられる」といった考え方に変化する。

誰しもこれまでと同じ土俵で戦うことが難しくなるタイミングは、どこかで必ず訪れるからである。そうなれば、これまでとは何か違った形で仕事に意義を見出すことも考える必要があるだろう。

70歳雇用もあり得る時代において、多くの人のキャリアは拡張するだけのものではなくなっている。転機に向き合うのがつらいからといってそれを避けていれば、自分を取り巻く環境変化に対して適切に対処できなくなってしまう。