「定年延長で65歳まで働ける」と言われても、安心できるわけではない。むしろ“出世した勝ち組”と呼ばれた部長や課長ほど、役職を降りた後の再雇用で苦労するケースが多い。50代以降も「会社に必要とされる人」になるにはどうしたらいいのか。『再雇用という働き方 ミドルシニアのキャリア戦略』(PHP新書)から一部を紹介する――(第2回)。

役職定年しても同格の専門職につく理由

これからのミドルシニア雇用の鍵を握っているのは各企業の人事制度である。年齢による画一的な処遇、働き方を主体的に選択できないこと、ポストオフ後の長いキャリアなど、顕在化している課題をどのようにすれば解決していけるのだろうか。人事制度の現状を確認し、これからのあるべき姿を明らかにしていきたい。

ミドルシニア社員に関係する人事制度として、定年制度と合わせて重要なのは役職定年制である。労務行政研究所の調査によると、3割程度の企業は役職定年制を設けており、一定の年齢になったときにポストオフをすることを制度的に認めている。

部長職や課長職の人が役職定年した後、職位はどうなるのか。役職定年をした後は、概ね同格の専門職につくといったケースもあれば、役職定年前と比べて格下の専門職やライン職につくといったケースもあるだろう。

ポストオフをしたのに、なぜ同格の専門職につくのかと違和感を持つ人もいるかもしれない。これは横スライドと呼ばれる措置である。つまり、管理職から外すことによって役職手当はなくなるが、基本給まで大きく下げてしまえばその人の生活に大きな影響が生じてしまうため、給与を過度に下げないためにしばらくは同格の専門職としておくのである。

結局、再雇用で給与は激減する

専門職というと特別なスキルを持つ人を想像するかもしれないが、ここで言う専門職とは、担当部長や専任課長など、いわゆる組織長ではない管理職を指している。つまり、専門職と銘打っているものの、それはあくまで名目上であり、実態としての中身は専門的な仕事とは異なるものとなっている。企業の制度上の仕組みでは、管理職以外に高位の役職につけるのが専門職しかないため、このようになっているのである。

しかし、同格の専門職でいられる期間は長くはない。部長だった人ならば、ポストオフの時点では担当部長などの肩書を与えてワンクッション置いたとしても、2~3年経過して定年を迎えれば、その役職も外れて給与も急激に下がることになる。

ビジネスマンは赤い下矢印を持つ
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課長職に関しては、役職定年を厳密に運用し、その後すぐに現場でこれまでのスキル・経験を生かして働く社員へと移行させる傾向がある。部長職のほうが、適切な後任がいないなどと理由をつけ、ポストオフをせずに同程度の役職を定年直前まで引っ張るのである。あるいは、ポストオフをしても、先述のようなポストで後進の部長を育てるといった特別ミッションを与えるなど、現場で働く社員への移行に躊躇するケースが多い。

しかし、実際に大企業で行われている人事をみると、こうしたワンクッション置くような運用は必ずしも望ましいものとは言えない印象を受ける。