無茶な要求を突きつけてきた相手は業界屈指の巨大企業。オファーを受け入れるか、市場から締め出されるかという状況に直面したとき、あなたの選択肢を増やすにはどうすればよいだろう。

あなたの会社はこれまでに、市場を支配している巨大企業、いわゆる「体重900キロもあるゴリラ」と交渉せざるをえない状況に陥ったことはないだろうか。今日では多くの産業で1つか2つの企業がすべてのルールを決めている感がある。ネゴシエーターのあなたは、相手が差し出すものがどれほど少なくてもそれを黙って受け入れるか、それとも市場から完全に締め出されるか、という極端な選択に直面している。

次のような仮定の事例を考えてみよう。写真現像会社、ピクチャークイックは、グローバルに事業展開している巨大安売り小売りチェーン、スーパーマートのアメリカ国内の全店舗に1時間スピード現像ブースを設けている。現在の契約は双方に利益をもたらしているが、スーパーマートはすべてのブースを対象とする全国一括契約の更改にあたり、どの業者でも参加できる競争入札を行うことにしたといきなりピクチャークイックに通告してきた。ピクチャークイックには、競合他社が利益を度外視した安値で喜んで入札するのが目に見えている。何千ものブースを他社に奪われたら、同社は壊滅的な財務的打撃を受けるおそれがある。

通告からしばらくすると、スーパーマートはピクチャークイックに次のように伝えてくる。「1社から魅力的なオファーがきている。御社が契約を維持するためには、御社の店内売り上げのわが社受け取り分を10%引き上げ、なおかつブース賃借料を10%引き上げる必要がある。これを受け入れなければ、御社とのつきあいはこれまでだ」。

この要求を呑むという選択肢のほかに、ピクチャークイックの幹部にはどのような選択肢があるだろう。

弱い立場のネゴシエーターはきわめて強力に見える相手とどのように交渉すればよいのか。こうした場面で使える、3つの交渉戦略を紹介する。