海外へ進出している企業の共通の悩みは、管理職レベルの人材不足。国が違えば職場の文化も従業員のメンタリティも大きく変わる。経験したことのない環境でも力を発揮できる管理職の条件とは。

成果をあげるグローバル・マネジャーを育成するのはなぜそれほど難しいのだろう。答えは世界の国々と同じくらい入り組んでいる。どの企業にもそれぞれ具体的なニーズや課題があり、どの国にもそれぞれ独自の、しかも急速に変化している状況がある。

それでも、グローバルな経営管理という挑戦に対してよりしっかりと態勢を整えるために、企業やマネジャーにできることはある。本稿で焦点をあてるのは、(1)国境を越えて人を管理するという課題について、より明確に理解する、(2)新任のグローバル・マネジャーに対し、任地による文化の大きな差異について認識と理解を植えつける、(3)グローバル・マネジャーに、彼らが成功するために必要なツールと支援を与える、の3点である。

最も新しく、最も骨の折れる活動の場として中国やインドが台頭してくる中、経験豊富な幹部や洞察力のあるリーダーは、ソフト面、つまり文化的な事柄が経営管理上の重要な問題の種になってきたと異口同音に語る。

本社メンタリティを捨てる

文化の相違を受け入れ、それを活かして価値を築いていく作業は、フェニックスのサンダーバード・ビジネス・スクール教授、メアリー・ティーガーデンの言う「本社メンタリティ」を捨てることから始まる。

「グローバル環境で業績をあげていない企業を見ると、これらの企業の幹部が『われわれは国内では私と同じような人間を雇っている。他国のみんなも私と同じような人間であるにちがいない』と思っているのがよくわかる。ところが、人々はそういうふうには動かない」と、ティーガーデンは言う。

26年間の職業人生の多くをグローバル経済におけるマネジャーの課題を分析する作業に費やしてきたティーガーデンは、リーダーがグローバル・マネジャー候補者の感情移入の能力をもっと重視すれば、この問題は克服できると指摘している。

「グローバル環境で重要なのは、自分たちとは異なる個人やグループ、自分たちのものとは異なる組織やシステムとともに働く能力だ」と彼女は言う。

「また、何が人々を分かち、何が人々を一つにしているのかも理解しなければならない。自分と任地の人々がどのように似ており、どのように異なっているのかを理解することは、決定的に重要な出発点だ」

少なくとも企業はマネジャーに、彼らが入っていく新しい文化について、現地の人と自分たちとの行動がどのように異なっているのかを認識することを重点的に理解させる機会を与えなければならない。

そのほかにも、成功するグローバル・マネジャーが備えている重要な特徴がいくつかある、とティーガーデンは言う。なかでも次の3つの特徴はきわめて重要だ。(1)「違い」をきちんと意識していること、(2)新しい異なる考えを受け入れる姿勢、(3)組織の「ハード(量的)」要素と「ソフト(人的)」要素の両方に注目する能力。

これら3つの成功要因は、グローバル・マネジャー候補者が新しい任務を遂行するためのスキルや準備を評価する際、有益な枠組みとして使うことができる。