自分たちにとって都合がいい顧客に、的外れの質問に答えてもらい、その結果は「個人情報保護」のためにお蔵入り──。こんな顧客満足度調査よりずっと役に立つただ一つの質問がある。

私のお気に入りの顧客満足度調査を教えよう。ニューヨークのセントラル・パークを一望できる1泊平均700ドルの高級ホテルのものだ。ボーイ、レセプションでの迎え方、ロビーの外観や雰囲気、接客係、レストラン、ルームサービスなど、ありとあらゆるものを評価させる35の質問が並び、そのあとに「当ホテルが高級ホテルであるとどの程度、思われますか」という実にばかげた質問がくるのである。

実際、顧客満足度調査は今では長ったらしい悪ふざけと化している。以下、顧客満足度調査が役に立たない10の理由を挙げてみた。

(1)質問が多すぎる

企業は山ほどの質問を並べてしまう。それが調査の費用を押し上げ、回答する意欲をそぎ、回答者を少なくする。企業を対象とする調査でもマイナスになる。大手テクノロジー企業からの130もの質問が並んだ電子メール調査に、エンジニアがいらいらするのは当然だろう。ある物好きな人間の計算によると、8万5000人の社員が調査に26分費やすとすると合計3万7000時間近い労働時間となり、1時間の労働価値を100ドルとすると、調査には400万ドル近いコストがかかる。

(2)的外れな顧客が回答する

あなたは経営者として、長ったらしい調査に回答できるほどヒマな人間の意見を本当に聞きたいだろうか。あなたの会社に最も利益をもたらす顧客は、おそらく調査を無視するだろう。的外れな顧客の意見を聞くことは、企業の顧客対象の調査ではとくに問題だ。一例を挙げると、多くの社員がビジネス・ソフトを使っていても購買の決定を下すのはたいてい一握りの幹部である。ソフトウエア販売業者が顧客リストの全員に調査を送った場合、多忙な幹部はそれを無視するか、秘書に回答を任せる。ほとんどの回答者が、決定権のある幹部とは重視する点が必ずしも一致しない人という結果になるだろう。