(3)問題がしかるべき社員に届かない

顧客が不満の原因をきちんと答えたとしても、その情報はそれを解決できる人々のところには届かず、その顧客はマーケティング・レポートの単なるデータの一つになるだけだ。だいいち、山ほどの質問に対する膨大な量の回答に、現場の社員がどうやって対応できるだろう。調査の回答は問題解決のための資金を投じるに値するだけの経済的価値を持つ顧客から得る必要がある。しかし、顧客の匿名性は市場調査の神聖な原則であり、根本原因や可能な解決策を探るために追加質問をすることは、まったく不可能となっている。

(4)調査を装った売り込みになっている

あからさまな売り込みの電話を受けたときより最初に2、3の質問をされたときのほうが、潜在顧客が電話を切る確率が低いことを、販売業者は経験から知っている。結果として、顧客は調査らしきものを一切、信用しなくなる。実際、多くの企業が調査会社を使って顧客への電話調査を行っているが、顧客の問題を解決したり、顧客の経験を高めたりするつもりはまったくない。

(5)調査結果は業績と関連していない

ベイン・アンド・カンパニーの調査チームは一貫して、満足度調査の結果と収益性や成長を押し上げる顧客行動の関連は、せいぜいよくて微々たるものだという分析結果を得ている。たとえば、個々の顧客について詳しく分析してみると、一般に離反顧客の60~80%が離反前の調査で「満足」もしくは「きわめて満足」という回答を寄せていることがわかる。しかも、80%とか90%の満足度評価を得ている企業でも、一見したところ顧客ロイヤルティと思われるものからなんら経済的恩恵を受けていない場合が多い。