新しいネットワークの導入であれ、特許侵害関連の訴訟であれ、技術に関わる交渉は、大方のマネジャーの能力を超えた知識が要求される。不慣れな場面で失敗しないための「傾向と対策」とは。

企業幹部にとって、多くの人がほとんど知識のない技術分野で交渉する機会がますます増えてきている。新しい全社的ネットワークの導入をめぐる交渉であれ、技術特許侵害の申し立てに対処する交渉であれ、ソフトウェアのサプライヤーからよりよい顧客サービスを引き出そうとする交渉であれ、技術交渉はマネジャーにとってごく当たり前の仕事になっている。

こうした交渉は、技術的にさほど複雑でない交渉とどう異なるのだろう。技術の分野では、他の分野に比べて次の4つの問題が表面化しやすい。

(1)複雑性
新技術をめぐる交渉では、ハードウェアもしくはソフトウェアに関する高度な知識が必要とされる。

(2)不確実性
きわめて複雑なシステムの場合、それが特定のビジネス環境用に設定されたとき見込みどおりに機能するかどうか、確かなことは誰にもわからない。

(3)技術者のエゴ
新しい技術を設計した人や、それを推奨している人が交渉の結果に自身の利害がからんでいる場合、えてしてそうした個人が問題要因になる。

(4)組織変更
交渉での合意によって必要となるさまざまな組織変更が、実行の間に対立を生じさせることがある。

ハル・モビウス、トレーシー・ブレナー、ジョエル・カッチャー・ガーシェンフェルド、それに私の4人は、技術交渉に携わるネゴシエーターがこれらの落とし穴を避けるための、3つの方法を突き止めた。

本稿では、まず技術交渉の特殊な難しさを示すケーススタディから話を始め、そこからその3つのアドバイスをお伝えする。