【戦略(2)】原則に訴える

実際の交渉では、金銭以外の要因が交渉の一方または双方の当事者にとって、自分が思っている以上に重要であることが多い。あなたは相手側に彼らの関心について質問することで、これら他の要因を突き止めることができる。相手側が従っている基準や基本原則なりを突き止めれば、より強い立場で問題の解決方法について話し合うことができる。

コツは、相手側が自分たちの成功をどのように測定しているかを突き止め、それから相手がその目標を達成するのを手助けできる方法、しかも、こちらのコストが最小限ですむ方法を考え出すことだ。たとえばこんなふうに切り出して相手の反応を見てみよう。

●どこかの会社がわが社と同じサービスをもっと安い価格でオファーしているとしたら、その会社は単に御社に入り込むために無理な安値を提示しているだけだ。その価格では質の高いサービスを提供できない。不満を持った顧客は御社から離れていくだろう。

●われわれはすばらしい協力関係を築いている。わが社の柔軟性と忠誠心は御社にとっていくばくかの価値がありはしないのか。

このような訴えに対して「これを受け入れないなら、御社とはこれまでだ。喜んで出店してくれる別の業者がいるのだから」という反応が返ってくることも考えられる。しかし、賢明な企業幹部は、短期的な収益性の向上だけでなく堅固な協力関係や顧客満足も大切にすることの重要性を理解している。

原則に訴える主張は、もちろん適切な人物に対して行うことが大切だ。可能なかぎりよい条件を引き出す責任を負っている中間管理職は、こうした主張を聞かせる相手として適切ではない。強い相手と取引しているときは、その取引関係が続いているかぎり相手側のトップ・マネジメントとのつながりを育んでおこう。