復活を目指す経営変革は時間との戦い

IHIはさらに深刻な事態に襲われている。国内外工事での事故や不具合に、愛知工場(愛知県知多市)の海洋構造物事業でのトラブルなどが重なり、16年3月期は300億円の最終損失を計上し、7期ぶりの最終赤字に転落する見通しだ。同期は四半期ごとに立て続けて業績を下方修正する体たらくで、斎藤保社長兼最高経営責任者(CEO)から「ものづくりの力の低下は否めない」と自戒を込めた発言も飛び出すありさまだ。

川重もブラジルでの合弁船舶事業が原油安の影響から資金繰りに逼迫し、15年10~12月期に221億円の損失を計上しており、3社のものづくりに対する“基礎体力”の衰えは否めない。その意味で、経営変革は待ったなしで、IHI、川重はそれぞれ社長交代をてこに、製造現場の刷新に臨む。

IHIは4月1日付で、満岡次郎取締役常務執行役員が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格し、斎藤氏は代表権付きの会長兼CEOとなり、二人三脚で経営の建て直しの陣頭指揮に当たる。満岡氏は稼ぎ頭の航空エンジン畑出身で、同社初のCOOに就くと同時に、トラブルが相次ぐ現場を自ら統括する異例の体制でものづくり力の再生を急ぐ。

川重は6月末に村山滋社長が代表権のある会長に就き、後任に金花芳則常務が昇格する。同社は13年6月に三井造船との経営統合を巡って当時の長谷川聡社長ら統合推進派の役員が解任された経緯があり、村山氏が社内の“しこり”をほぐした後を引き継ぐ金花氏には人心一新により新たな成長軌道乗せを託すと同時に、ブラジル合弁事業で甘さを露呈したリスク管理の強化が求められる。

一方、三菱重工は客船事業のトラブルを教訓にリスク管理体制を整備するほか、保有株式や遊休不動産など約2000億円の資産を18年までの2年間で売却し、毀損した財務体質を立て直す方針とされる。総合重機大手はものづくり力が生命線なだけに、その復活を目指す経営変革は時間との戦いであり、否応なしにその実行力が試される。

【関連記事】
半世紀ぶり国産旅客機「MRJ」にちらつく政治の影
川重・三井、統合破談 造船業の未来は?
<三菱重工業>大企業病を退治した大宮改革1800日【1】
日立と三菱重工は、経営統合すべきだ
“2014年問題”目前で造船大手の再編待ったなし