増税が日本経済に与えるインパクト
国際金融経済分析会合が3月16、17、22日、4月7、13日とこれまで5回の官邸で行われた。主に海外の有識者を招致して国際金融、経済の情勢分析を依頼したものだが、実質的には、新聞紙上などで指摘がされている通り、2017年4月の10%の消費税増税判断を問う、あるいは増税見送りのための試金石のような位置づけになっている。
官邸HPでは当日使用された各教授の配布資料が会合直後から掲載されているが、3回目と4回目の配布資料はなしとなっている。レジュメとしての資料がなければ、せめて当日の文字起こしぐらい掲載してくれてもよいものを、と思っていたところ、クルーグマン教授から当日の一問一答を含めた英文の文字起こしが出てきた(他の教授同様、日本語訳とともに英文資料の官邸HPへの掲載を期待したい)。資料はA4の12ページ、単語数は約5000語となっている。
https://www.gc.cuny.edu/CUNY_GC/media/LISCenter/pkrugman/Meeting-minutes-Krugman.pdf(ニューヨーク州立大学HPより)
消費税がらみで注目するなら、質疑応答の中で首相が消費税5%から8%への増税がなぜ日本に多大なインパクトを与えるのか、デフレがその要因なのかと問うたところであろう。例えば2月15日の衆議院予算員会でも「8%への引き上げで、予想よりもはるかに消費の落ち込みが大きく長く続いた」との首相発言が確認できるように、増税による悪影響を官邸が認識しているのはわかるのだが、質疑応答を見る限りではどうやら未だにその原因についての確証が持ててないようだ。
「デフレ(deflation)」の登場回数は13回と頻度が高いが、首相の先述の問いへの回答の中で、クルーグマン教授はこの単語を使ってはいない。「デフレ」は結果として発生している経済現象であり、そのものが原因でない以上、暗に「デフレ」がその原因とは言い難いとする教授のスタンスはある意味当然であろう。根本的な理由として日本で需要を引き出す難しさをあげ、具体例の1つとして労働人口の減少を指摘しているが、これは日米欧共通の問題でもあり、日本には特別な難しさがあるという抽象的な表現に留まっている。