スタートは危険な普天間飛行場の移設
【塩田潮】沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題は、官房長官が沖縄基地負担軽減担当大臣として直接、交渉に当たっていますが、昨年11月の沖縄県知事選で翁長雄志知事が登場した後、政府と沖縄県の話し合いは進展せず、逆に対立が深刻化した印象があります。今年8月から1カ月間、辺野古での工事を中断して集中協議を行いましたが、決裂しました。
【菅義偉(内閣官房長官)】「政権が沖縄問題で失敗している」とみなさんから言われますが、沖縄問題担当相の立場から言えば、19年前に日本政府とアメリカ政府で移設を決め、それから3年かかって16年前に辺野古移設が決まった後、そこから一歩も進んでいなかった。安倍政権ができて、辺野古の埋め立て承認を仲井眞弘多知事からいただいた。政権とすれば、約束したことを一つずつやってきたわけです。
ただ、知事が変わり、反対派から出た人が知事になった。翁長知事は「辺野古阻止」で選挙に勝っていますから、簡単に下りるというのは難しいと思うんです。
かといって、知事になったのですから、普天間飛行場の危険性はどうやって除去するのか、この話し合いをやりましょうというのが集中協議だったんです。
【塩田】集中協議で、翁長知事とどんな議論になったのですか。
【菅】残念だったけど、翁長知事の原点は、普天間飛行場が危険だから移そうということではなかった。戦後、アメリカが沖縄を占領したことで、話がそこに戻ってしまった。私は「それは違うのでは。スタートは危険な普天間飛行場の移設の話でしょう」と言った。普天間飛行場は、周りに住宅が張りついて、小学校もあり、ものすごく危険です。一つ申し上げておきたいのは、辺野古移設は、現在の普天間飛行場をそのまま持っていくものではないということです。普天間飛行場には3つの機能がある。第1は空中給油機の運用機能で、これは安倍政権になってから全部、山口の岩国飛行場に持っていった。第2の緊急時の航空機の受け入れ機能も、九州に持っていくと約束しています。残るのはオスプレイの運用機能だけです。これも、できる限り、県外への訓練移転を進めている。辺野古移設が実現すれば、普天間飛行場は閉鎖できます。
知事はかつて自民党県連幹事長でした。「県会議員のとき、早く県内に移転すべきだと言っていたじゃないか」と私は言った。知事は「いや、今は変わったんだ」と。
【塩田】沖縄の基地の現状と将来の展望をどう見ていますか。
【菅】戦後70年が経った今も、沖縄には多くの米軍施設があります。それを少しでも軽減するのが私たちの役割です。総理はオバマ大統領との2回の日米首脳会談で、とにかく嘉手納以南の基地は前倒しで返還を、と言っているんです。嘉手納以南には沖縄の人の8割が住んでいます。そこにある基地の7割を、いつ返す、という約束をしたのです。具体的に目途をつけたのは初めてです。その結果、現に今年3月末に、西普天間住宅地区が初めて返ってきた。東京ドーム11個分くらいの広さです。ここには国際医療拠点をつくる。それを国が応援します。普天間飛行場を辺野古に移設すれば、こういったものがどんどんできる。
アメリカの海兵隊は沖縄に1万9000人いますが、そのうち9000人を国外に移すことを日米で合意している。グアムに4000人くらい行きます。辺野古移設がきちんとできれば、普天間は閉鎖できて、基地は減る。それが目に見える形になるんです。総理は「もう理屈じゃない。目に見えなければ駄目だろう。やることは全部やろう」と。そういうことでやっています。