「農家の息子」では合コンにも出られない

【弘兼】日本の農業の競争力を高めるためには、もっと民間企業の力を活用するべきではないでしょうか。農協が決して強いとはいえない営業、宣伝、ブランディングといった分野について、民間企業には様々なノウハウの蓄積があります。ところが、そうした民間企業の農業進出には、「岩盤規制」の壁がありました。

【金丸】たとえば農地法の問題がありますね。これまで農業生産法人には、企業は4分の1を超える出資ができませんでした。今回の改革では、出資比率を2分の1未満まで高められるようにしました。

【弘兼】過半数まであと少しですね。

【金丸】新規参入をするなら、2%ぐらいの人を説得するぐらいの努力はすべきです。ただ、この枠組みも見直せる時期が来るかもしれません。

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農業従事者は50年前に比べて8割減

【弘兼】現在、農業従事者の平均年齢は66歳。高齢化の原因は新規の就農が難しいからだと思います。いきなり農地を取得して、自営で農業に参入するのは難しい。一方で、正社員を募集している農業生産法人は少ない。企業の農業参入が活発化し、大規模な生産法人が増えれば、ネクタイをしないサラリーマンのような形で、農業に携われる環境が整うでしょう。収入の安定した職場がつくれれば、新規の就農者が増えて、平均年齢も下がるはずです。

【金丸】若い就農者が家族経営の農家の仕事を手伝っているようなケースでは、たとえば「合コン」に参加したとき、女性から「お仕事は何をされているのですか」と聞かれても、○○家の手伝いだと普通の会社員のように名刺も渡せません。これから農家は法人化、大規模化を進めていく必要があります。そうすれば、たとえば「○○農業法人の生産部長です」と名刺を渡せます。

【弘兼】そのためには農地を集約しやすい仕組みに整える必要がありますね。いまは農地の売買が難しいため、耕作放棄地も少なくありません。

【金丸】ようやく国が「農地中間管理機構」という仕組みをつくりました。いわゆる「農地バンク」です。耕作放棄地などを借り受け、担い手にまとまりのある形で農地を貸し付けます。ただ、具体的な業務は地方自治体に任されているので、地域によって濃淡があります。ぜひとも機能するように取り組んでもらいたいです。